ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

​闇の魔力によって全身の力が抜けかける寸前、僕は冷たい床に転がっていた銀剣の柄を掴み取った。

​剣を支えに身体を半身起こすと、視線を広間に散らばる生徒たちへと向けた。

​彼らをこのまま放置すれば、術者が仕掛けた罠や、再び現れる敵に襲われる可能性がある。

​(最優先は……人質の解放と情報の保持だ!)

​僕は、銀剣に魔力を流し込み練り上げた。

​そして生徒たちを包む保護の光の結界に、簡易の瞬間転移の術式を組み込む。

​目標座標は、セレスの現在地。

​体内の魔力が大きく脈打つ音と共に、七人の生徒たちは光の結界に包まれたまま一瞬で広間から消失した。

​──転移は完了した。

​次にこの傷を治し、本体を追うため僕は本来の姿へ回帰することを試みた。

​僕の体内に残る天界の因子を起動させ光の治癒力を最大化する。

​しかし、貫かれた傷口から体内に流れ込んだ悪魔の力が、この行為を激しく拒絶した。

​「グァアッ!」

​僕の体内で光と闇の魔力が凄まじい勢いで衝突し、魔力回路を焼き切ろうとする激痛が全身を襲った。

​喉の奥から呻き声が漏れ、激しい痙攣で血が再び噴き出す。

​(クソッ……ここまで深く侵食されているのか!)

​僕は痛みで視界が歪む中、周囲を白銀の瞳で睨みつけた。

​「こんなところで…もたついている場合ではない」

​僕は銀剣を杖代わりに使い、ゆらゆらと立ち上がる。

​もう一度、天界の因子を起動させ本来の姿へ回帰しようとするが、激痛が再び僕の体を襲い、口から銀の血が溢れて吐き出す。

​「げほ……ごほ……はぁ…はぁ…」

​クソ……視界が大きく揺らぐ。

​隙を突かれたとはいえ、これは僕の落ち度だ。だから、自分で蒔いた種は自分で回収しなければならない。

​「……ふっ…ふはは…悪魔ごときが……この僕を手中に収められると思ったら……大間違いだ!!」

​僕は汚染されていない魔力回路を使って、目の前の壁に向かって魔法を放ち外への道を作る。

​僕はゆらゆらと体を揺らしながら、壁に手をつきながら下を見下ろした。

​下は何も見えない奈落だ。しかし、微かに水の流れる音が聞こえる。

​僕は目を閉じ聴覚に意識を集中し、この地下に流れている川の行き先を確認する。

​脳内にここではない、どこか森の中の景色が脳裏に浮かんだ。

​「……ふっ、一か八かなど……賭けに出るなんて僕らしくない。だけど……」

​ここに居るよりは遥かにマシだ。

​そう思った僕は、残った魔力を使って全身を覆いそのまま躊躇うことなく奈落の底へ向かって落ちていった。