ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

そんな考えが頭を過った、その瞬間だった。

突如、闇の力が僕の身体を貫いた。一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

僕は貫かれた箇所へ視線を落とした。破れた装束の隙間から銀色の血が滲み出し、瞬く間に布地を染め上げていく。

その光景に、僕は白銀の瞳を大きく見開いた。僕の瞳をもってしても、その一撃を完全に捉えることはできなかった。

若者たちを保護するため、光の結界を構築していた。そのわずかな間、周囲への警戒が疎かになった――敵は、その一瞬の隙を突いたのだ。

鋭利な刃物で切り裂かれたかのように、装束には深い裂け目が走っていた。そこから溢れ出した天界の血が、銀色の輝きを放ちながら闇に包まれた広間へと飛び散る。

身体を貫いた一撃に体勢を崩され、僕は受け身を取ることもできず、岩盤へと激しく叩きつけられた。

その直後、傷口から悪魔の魔力が濁流のように流れ込んできた。

異質な魔力は僕の体内を蹂躙し、光の魔力回路を焼き切ろうと荒れ狂う。血管を這い上がるような感覚とともに、全身が激しく軋んだ。

「っ……!」

激痛に顔を歪めた瞬間、銀剣を握る手から力が抜けた。

剣が指先を滑り落ち、カーン、と乾いた音を立てて冷たい床を転がる。

(く、そ……! このままでは……!)

激痛に耐えながら、僕は攻撃の痕跡を追った。

視界の端に、黒い槍の残滓が見える。

あの一撃は、祭壇の儀式によって蓄えられた莫大な闇の魔力を利用し、遠隔から放たれたものだろう。先ほどの術者が消滅したように見えたことも、これで説明がつく。

本体は、まだこの洞窟のどこかにいる。

いや――違う。

この場所から直接攻撃したのではない。別の場所から、闇の魔力を遠隔操作して放ったのか。

そのときだった。

ドクン、と僕の身体が大きく脈打った。

同時に、体内で何かが光の因子と激しく衝突した。これまで感じたことのない、決定的な違和感が内側から突き上げてくる。

(……なんだ、この違和感は……?)

それは、身体の奥底から込み上げてくる、邪悪な何かを思わせる感覚だった。

僕は激しく咳き込んだ。

口の端から、銀色の血が一筋垂れ落ちる。

傷口からは、闇の魔力が凍てつくような冷たさを伴って侵入し続けていた。僕の魔力を侵食し、奪い取りながら、体内の光の因子を蝕んでいく。

「チッ……計算外だ」

こんな状況に陥ってなお、僕の口から出たのは、効率を重んじる言葉だった。

若者たちの保護は完了している。

だが、僕自身が動けなくなれば、任務の遂行は不可能になる。ここまでの努力も、彼らを救い出すための計画も、すべてが無意味になりかねない。

僕は砕けた岩盤に身体を預けながら、必死に手を伸ばした。

床に転がった銀剣へ。

今は、あれを取り戻さなければならない。