僕は地面を蹴りつけた。
次の瞬間、足元の岩盤が粉砕される。爆発的な加速によって、僕の身体は一直線に術者へと迫った。その速度は音速を超え、空間そのものを引き裂くかのような轟音が広間に響き渡る。
術者のローブから、黒い稲妻を思わせる魔力が噴き上がった。
瞬時に三重の闇の結界が展開される。祭壇に繋がれていた若者たちから流れ出す微弱な魔力が、結界へと吸い上げられ、その強度を増していく。
「遅い!」
僕は叫ぶと同時に、銀剣を正中線へと振り抜いた。
刀身に凝縮された光の魔力が、嵐のように解き放たれる。その輝きは、太陽の光にも匹敵するほど強烈だった。
光と闇が衝突した瞬間、広間の空気が灼熱と極寒に引き裂かれた。
凄まじい衝撃波が祭壇を襲い、若者たちを拘束していた鎖を粉砕する。解放された彼らの身体が、衝撃に煽られて広間の床へと投げ出された。
僕の光の斬撃は、最初の二層の闇の結界を、抵抗する暇さえ与えずに粉砕した。
砕け散った結界は黒い塵となり、光の奔流に呑まれて消滅する。
術者が、初めて動揺を見せた。
フードの奥で、黒い魔力が激しく揺らめく。
「っ……!」
最後の第三層が、僕の斬撃を正面から受け止めた。
結界は一瞬、銀色の光を呑み込もうとするかのように膨張し、粘り強く抵抗する。しかし、僕の放った圧倒的な魔力の奔流を押し留めることはできなかった。
光の刃が、闇の結界を真っ二つに断ち割る。
そして、そのまま術者の肉体へと到達した。
「キィヤアアアアアアアアアアアアアッ!」
人間のものとは思えない、深淵から絞り出されたような断末魔が広間に響き渡った。
術者のローブは光の奔流に晒され、瞬く間に焼失する。その身体もまた、銀色の輝きに包まれ、輪郭を失っていった。
僕は剣を振り抜いた勢いのまま術者のいた場所を通り過ぎ、祭壇の背後にある岩壁を深く抉った地点で停止した。
銀剣を軽く一振りし、刀身にまとわりついた黒い魔力の残滓を振り払う。
広間の中央には、黒焦げになったローブの残骸と、岩盤に深く刻まれた十字型の傷跡だけが残されていた。
「愚かな」
僕は冷ややかに呟き、視線を広間に散らばる若者たちへと向けた。
全員が意識を失っている。しかし、目視できる範囲では、致命傷を負った者はいないようだった。
僕は銀剣を鞘に収めると、白銀の手袋を嵌めた両手を彼らへとかざした。
身体の内側から、穏やかで温かな光の魔力が湧き上がる。
その光は広間に散らばる若者たちへと流れ込み、一人ひとりを包み込んでいった。
光の膜が彼らの身体を覆い、瞬時に保護と治癒の結界を構築する。外部からの衝撃を遮断するだけでなく、儀式によって刻み込まれた微細な精神汚染さえも浄化する術式だ。
これで、ひとまず彼らの安全は確保できた。
(これでよし。セレス殿の要求は満たした)
そう判断しかけた、そのときだった。
僕の瞳は、術者が消滅する寸前に放った、極めて微細な魔力の閃きを捉えていた。
ほんの一瞬。見落としていてもおかしくないほど微かな反応だった。
だが、見間違いではない。
(逃したか……?)
僕は術者が立っていた場所へ視線を戻した。
いや、違う。
(本体は別の場所にいる。今の術者は、悪魔の力を植え付けられた傀儡か……あるいは、分身に過ぎない)
僕の表情が、再び険しく引き締まった。
敵を排除したつもりでいたが、実際にはその一端を潰しただけだったらしい。
そして、あの微かな魔力の閃きが示すものは、まだ分からない。
僕は周囲を警戒しながら、広間に残された魔力の痕跡を探り始めた。
次の瞬間、足元の岩盤が粉砕される。爆発的な加速によって、僕の身体は一直線に術者へと迫った。その速度は音速を超え、空間そのものを引き裂くかのような轟音が広間に響き渡る。
術者のローブから、黒い稲妻を思わせる魔力が噴き上がった。
瞬時に三重の闇の結界が展開される。祭壇に繋がれていた若者たちから流れ出す微弱な魔力が、結界へと吸い上げられ、その強度を増していく。
「遅い!」
僕は叫ぶと同時に、銀剣を正中線へと振り抜いた。
刀身に凝縮された光の魔力が、嵐のように解き放たれる。その輝きは、太陽の光にも匹敵するほど強烈だった。
光と闇が衝突した瞬間、広間の空気が灼熱と極寒に引き裂かれた。
凄まじい衝撃波が祭壇を襲い、若者たちを拘束していた鎖を粉砕する。解放された彼らの身体が、衝撃に煽られて広間の床へと投げ出された。
僕の光の斬撃は、最初の二層の闇の結界を、抵抗する暇さえ与えずに粉砕した。
砕け散った結界は黒い塵となり、光の奔流に呑まれて消滅する。
術者が、初めて動揺を見せた。
フードの奥で、黒い魔力が激しく揺らめく。
「っ……!」
最後の第三層が、僕の斬撃を正面から受け止めた。
結界は一瞬、銀色の光を呑み込もうとするかのように膨張し、粘り強く抵抗する。しかし、僕の放った圧倒的な魔力の奔流を押し留めることはできなかった。
光の刃が、闇の結界を真っ二つに断ち割る。
そして、そのまま術者の肉体へと到達した。
「キィヤアアアアアアアアアアアアアッ!」
人間のものとは思えない、深淵から絞り出されたような断末魔が広間に響き渡った。
術者のローブは光の奔流に晒され、瞬く間に焼失する。その身体もまた、銀色の輝きに包まれ、輪郭を失っていった。
僕は剣を振り抜いた勢いのまま術者のいた場所を通り過ぎ、祭壇の背後にある岩壁を深く抉った地点で停止した。
銀剣を軽く一振りし、刀身にまとわりついた黒い魔力の残滓を振り払う。
広間の中央には、黒焦げになったローブの残骸と、岩盤に深く刻まれた十字型の傷跡だけが残されていた。
「愚かな」
僕は冷ややかに呟き、視線を広間に散らばる若者たちへと向けた。
全員が意識を失っている。しかし、目視できる範囲では、致命傷を負った者はいないようだった。
僕は銀剣を鞘に収めると、白銀の手袋を嵌めた両手を彼らへとかざした。
身体の内側から、穏やかで温かな光の魔力が湧き上がる。
その光は広間に散らばる若者たちへと流れ込み、一人ひとりを包み込んでいった。
光の膜が彼らの身体を覆い、瞬時に保護と治癒の結界を構築する。外部からの衝撃を遮断するだけでなく、儀式によって刻み込まれた微細な精神汚染さえも浄化する術式だ。
これで、ひとまず彼らの安全は確保できた。
(これでよし。セレス殿の要求は満たした)
そう判断しかけた、そのときだった。
僕の瞳は、術者が消滅する寸前に放った、極めて微細な魔力の閃きを捉えていた。
ほんの一瞬。見落としていてもおかしくないほど微かな反応だった。
だが、見間違いではない。
(逃したか……?)
僕は術者が立っていた場所へ視線を戻した。
いや、違う。
(本体は別の場所にいる。今の術者は、悪魔の力を植え付けられた傀儡か……あるいは、分身に過ぎない)
僕の表情が、再び険しく引き締まった。
敵を排除したつもりでいたが、実際にはその一端を潰しただけだったらしい。
そして、あの微かな魔力の閃きが示すものは、まだ分からない。
僕は周囲を警戒しながら、広間に残された魔力の痕跡を探り始めた。



