洞窟の内部は、光が一切届かない深い闇に包まれていた。湿った岩壁から漂う腐敗臭に、黒い魔力の淀みが混じり合い、陰鬱な空気となって辺りに満ちている。
(最下層だ。獲物は必ず、魔力の濃い場所――つまり、この谷の最も深い場所にいる)
僕は迷うことなく、魔力の痕跡が最も濃い方向へと移動を開始した。
身体から放たれる魔力を最小限に抑えながら、足に力を込める。次の瞬間、僕の姿は闇の中へと溶け込んだ。
地面に微かな振動が走る。
常人の目では捉えられないほどの速度で、僕は洞窟の回廊を駆け抜けていった。
最初の障害は、曲がり角の先にいた。
闇色のローブをまとった男が三人。彼らは侵入者である僕に気づくと、慌てて低級な闇魔法の詠唱を始めた。
その動きは、僕の目にはあまりにも遅く映った。術式を組み立てる指の動きも、魔力を練り上げるわずかな間も、すべてが手に取るように分かる。
「愚か者め」
冷ややかに呟いた僕は、彼らが術式を完成させるよりも早く、その間を駆け抜けた。
抜き放った銀剣が、月光を思わせる冷たい輝きを帯びる。
三人の首筋を、刃が一閃した。カッ、と乾いた音が闇に響く。
僕が五歩先へ進んだ頃、三人の男たちはようやく、自分たちの身に何が起きたのかを理解する間もなく崩れ落ちた。彼らの魔術が発動することはなかった。
僕は振り返りもせず、さらに奥へと進んだ。数秒後、回廊の先に四人の魔術師が姿を現した。
彼らは複数の防御魔術を身にまとい、警戒の魔法陣を二重に展開していた。結界は闇の魔力を帯び、黒く鈍い光を放っている。
「侵入者だ! 迎撃しろ――!」
叫び声が響く。
だが、遅い。
僕は銀剣を構えると同時に、周囲の岩壁と敵の魔法陣に流れる魔力へ意識を向けた。
術式を維持するために使われている魔力。そのうち、構造上不要な余剰分だけを選び出し、強制的に吸収する。
一瞬にして、敵の防御術式がわずかに揺らいだ。
その隙に、僕は吸収した魔力を組み替え、高密度の光魔法を構築する。
銀剣の刀身に光が収束した。
次の瞬間、剣を通して放たれた銀色の光線が、闇の回廊を一気に貫いた。
「時間の無駄だ」
光線は二重の防御魔法陣を、薄い膜でも切り裂くかのように突破した。
四人の魔術師は防御を立て直す間もなく、光の奔流に呑み込まれた。直後、彼らの姿は塵も残さず消え失せ、岩壁には十字状に抉られた痕跡だけが残った。
轟音が回廊に反響する。
しかし、僕の足取りは少しも乱れなかった。
(やはり、最下層に近づくほど魔力が濃くなっている。あの黒い魔力の残滓も、ここで一段と強まっているな)
僕は銀剣を握り直し、その輝きを闇の中に走らせながら、最後の曲がり角へと向かった。
この先にいるものが何であろうと、逃がすつもりはなかった。
(最下層だ。獲物は必ず、魔力の濃い場所――つまり、この谷の最も深い場所にいる)
僕は迷うことなく、魔力の痕跡が最も濃い方向へと移動を開始した。
身体から放たれる魔力を最小限に抑えながら、足に力を込める。次の瞬間、僕の姿は闇の中へと溶け込んだ。
地面に微かな振動が走る。
常人の目では捉えられないほどの速度で、僕は洞窟の回廊を駆け抜けていった。
最初の障害は、曲がり角の先にいた。
闇色のローブをまとった男が三人。彼らは侵入者である僕に気づくと、慌てて低級な闇魔法の詠唱を始めた。
その動きは、僕の目にはあまりにも遅く映った。術式を組み立てる指の動きも、魔力を練り上げるわずかな間も、すべてが手に取るように分かる。
「愚か者め」
冷ややかに呟いた僕は、彼らが術式を完成させるよりも早く、その間を駆け抜けた。
抜き放った銀剣が、月光を思わせる冷たい輝きを帯びる。
三人の首筋を、刃が一閃した。カッ、と乾いた音が闇に響く。
僕が五歩先へ進んだ頃、三人の男たちはようやく、自分たちの身に何が起きたのかを理解する間もなく崩れ落ちた。彼らの魔術が発動することはなかった。
僕は振り返りもせず、さらに奥へと進んだ。数秒後、回廊の先に四人の魔術師が姿を現した。
彼らは複数の防御魔術を身にまとい、警戒の魔法陣を二重に展開していた。結界は闇の魔力を帯び、黒く鈍い光を放っている。
「侵入者だ! 迎撃しろ――!」
叫び声が響く。
だが、遅い。
僕は銀剣を構えると同時に、周囲の岩壁と敵の魔法陣に流れる魔力へ意識を向けた。
術式を維持するために使われている魔力。そのうち、構造上不要な余剰分だけを選び出し、強制的に吸収する。
一瞬にして、敵の防御術式がわずかに揺らいだ。
その隙に、僕は吸収した魔力を組み替え、高密度の光魔法を構築する。
銀剣の刀身に光が収束した。
次の瞬間、剣を通して放たれた銀色の光線が、闇の回廊を一気に貫いた。
「時間の無駄だ」
光線は二重の防御魔法陣を、薄い膜でも切り裂くかのように突破した。
四人の魔術師は防御を立て直す間もなく、光の奔流に呑み込まれた。直後、彼らの姿は塵も残さず消え失せ、岩壁には十字状に抉られた痕跡だけが残った。
轟音が回廊に反響する。
しかし、僕の足取りは少しも乱れなかった。
(やはり、最下層に近づくほど魔力が濃くなっている。あの黒い魔力の残滓も、ここで一段と強まっているな)
僕は銀剣を握り直し、その輝きを闇の中に走らせながら、最後の曲がり角へと向かった。
この先にいるものが何であろうと、逃がすつもりはなかった。



