ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

出口へと向かう僕の進路を、丸眼鏡をかけた魔導師が驚くべき勢いで駆け寄り、その場で深々と頭を下げた。頭上の丸眼鏡が今にも滑り落ちそうになっている。

「お、お願いします! どうか、助けてください!」

その土下座にも等しい切実な嘆願に、僕は思わず白銀の瞳を丸くして、きょとんとした表情を浮かべた。

目の前の青年が、プライドの高い大魔導院の魔導師という身分でありながら、面識のない人間に公衆の面前でこうも必死に頼み込むという事実は、僕の冷静な計算を一瞬だけ狂わせた。

「あっ! 失礼いたしました! 僕はセレスと申します。大魔導院の魔導師で、行方不明になった教え子たちを捜しに来ました!」

セレスと名乗った青年は、顔を上げずに必死に訴える。その声には、責任感と焦燥が色濃く滲んでいた。

「……君は大魔導院の魔導師と言ったな。なぜ、僕に助けを求める? 見ず知らずの僕に頼むよりも、専門の騎士団や魔導師団を呼ぶべきだろう」

僕は冷静さを取り戻し、冷たい論理で問う。セレスは震える声で答えた。

「それが……この辺境の地では王都への緊急要請が届くまで時間がかかります。そして、貴方様……貴方様の放つ魔力と、その一点の曇りもない完璧な身なりは、ただの旅人ではないと判断しました」

セレスは、恐る恐る僕の瞳を見上げた。彼の丸眼鏡の奥の瞳には、強い期待と恐怖が混ざり合っているのが伺える。

「まるで、伝説の守護天使かのような圧倒的な力を感じました。僕の教え子たちを救うため……どうか、力を貸していただけないでしょうか!」

僕の顔から、きょとんとした表情は完全に消え失せた。代わりに白銀の瞳を鋭く細める。

(この男……僕の魔力の格を正確に察知し、それを基に助けを求めた、と? 大魔導院の魔導師にしては、判断力と嗅覚が鋭すぎる)

セレスの存在は、僕にとって時間の浪費になるか、あるいは地元情報と合法的な動きを提供してくれる一時的な駒になるか――二つに一つ。そして、後者の可能性が極めて高くなってきた。

僕は口元に微かな、策略に満ちた笑みを浮かべた。

「……セレス殿。君の『守護天使』という評価は買おう。だが、僕はボランティアではない。僕の目的遂行に君の存在が有利と判断した場合のみ協力は考えよう」

僕はセレスを見据え、その提案の真意と価値を探るように問いかけた。

「君は、僕に何を提供できる? 僕の時間を短縮できるほどの価値を、君は差し出せるのか?」