「実は……最近、ヴァリス・エテルニタスへ向かう人たちが、途中で行方不明になる事件が多発しているのです。特に、強力な魔力を持つ者が狙われているという噂がありまして……」

もう一人のご令嬢も、静かに頷きながら付け加えた。

「はい。私たちの親戚からも、今回の『エテルナの審判』に参加するため街を出た者がいるのですが、数日前から連絡が途絶えております。魔法警察も動いているようですが、まるで神隠しにあったようだ、と」

彼女たちの不安は本物だった。この小さな街にまで届く噂だということは、その事件は無視できない規模になっているということだろう。

(行方不明? しかも強力な魔力を持つ者が狙われている、か)

僕は白銀の瞳を静かに細めた。

これは、兄が任務リストの項目:4に記していた『祭典の運営組織内部の不審な動き』と関係があるかもしれない。

そしてその噂が真実ならば、僕自身もまた狙われる対象になる。

僕はご令嬢たちを安心させるために、仮面の笑顔を維持したまま静かに答えた。

「貴重な情報、感謝いたします。警戒して旅を続けましょう」

「はい……。旅人様も、本当にどうかご無事で」

ご令嬢たちは再度深々と頭を下げると、固く閉ざされた立派な門の中へと姿を消した。

僕は夜の闇の中で、静かに思考を再構成する。

王都行きの馬車は三日後。これは時間を大幅にロスする。だが、この街で他に確実に長距離を移動できる手段はないだろう。変身して空を飛ぶのは最短だが、体力と魔力の消耗が激しく、到着直後に会談や戦闘があることを考えると賢明な手段ではない。

「三日間の足止め、そしてこの不穏な噂……」

僕は、コートの襟を立てた。この街を出る三日間、ただ待つわけにはいかない。王都行きの馬車が通るルート、その周辺で行方不明の事件が起きているのなら、犯人側の足跡を探る機会はあるだろう。

まずは、この街から探ってみるのもありか。