ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

僕に嘲笑され、恥をかかされた酔っぱらいたちは、怒りで顔を真っ赤に染めると、怒号とともに腰の剣を抜き放った。

すると、そのうちの一人が、後ろで震えていた令嬢の一人を乱暴に引きずり出し、か細い喉元に剣先を突きつけた。

「ひっ!」

令嬢の身体はがたがたと震え、恐怖に耐えきれず、頬を涙が伝っていた。

その光景を目にした僕は、白銀の瞳を氷のように鋭く細めた。

自分よりも弱い人間を人質に取り、状況を有利に運ぼうとする。その浅ましい姿勢に、僕の中で言葉にしがたいほどの嫌悪感が湧き上がった。

(人間はどいつもこいつも、己の無力を補うために、こうした卑劣な手段を使う)

残る二人の酔っぱらいも剣を構え、獣のような雄叫びを上げながら、僕に襲いかかってきた。

その瞬間、僕はゆっくりと瞳を閉じた。

自身の魔力を極限まで制御し、外部からの気配を意識の外へと追いやる。周囲の音さえ遠のいていくような静寂の中、僕は自身の内側へと意識を沈めていった。

キィィィン――。

脳内で魔力が圧縮される感覚が鋭い音となって響いた刹那、僕はカッと目を見開いた。

圧縮された魔力が瞬時に性質を変え、純粋な『覇気』となって白銀の瞳から放たれる。

その瞬間、目に見えない力が周囲を支配し、襲いかかってきた二人の意識を瞬く間に刈り取った。

二人はその圧力に抗うこともできず、たちまち意識を失った。手にしていた剣を取り落とすと、そのまま無様に地面へと倒れ込む。

「なっ……何だ……! お、お前、こいつらに何をした!」

僕は冷淡な笑みを浮かべながら、人質を取った男へとゆっくり歩み寄った。男の顔は、酔いと恐怖で引きつっていた。

僕は剣を抜き放つと、音速に迫る勢いで一気に間合いを詰めた。

「なっ……!」

男が瞬きをする。その一瞬の隙を逃さず、僕は剣の柄頭を男の脇腹へと正確に叩き込んだ。

「かはっ……」

男は短く苦悶の声を漏らし、力なく腕の力を緩めた。

その腕から滑り落ちた令嬢を、僕は迷わず抱き留める。そして、もう一人の令嬢の隣へそっと降ろした。

続いて、地面に倒れ込んだ男たちに手をかざし、不可視の魔力でその身体を拘束する。

三人をひとまとめに拘束すると、僕は魔法警察署のある方角へ向けて、彼らを勢いよく吹き飛ばした。

「大丈夫だ。命を奪うようなことはしていないさ。僕の時間を奪ったことへの代償としては、あれで十分だ」

周囲の危険は去っただろう。そう判断した僕は、そっと息を吐いた。

「あ、あの……! 本当にありがとうございました!」

「ん?」

振り返ると、先ほどまで恐怖に震えていた二人の令嬢が、並んで深々と頭を下げていた。

恐怖に震えながらも、自ら感謝を伝えられる。この状況でそんな振る舞いができるのなら、少なくとも、彼女たちはあの男たちと同類ではないらしい。

(ということは、彼女たちは無理やりあの男たちに連れ回されていたのか)

そう考えれば、先ほどの光景にも納得がいった。

僕は旅の貴族らしい紳士的な仮面を被り、二人に手を差し出した。

「お怪我がなくて何よりです。よろしければ、このままお屋敷までお送りしましょう」

「そ、そんな……助けていただいた上に、そこまでしていただくなんて、恐縮ですわ」

「もう夜も遅いです。ご家族もきっと心配されていることでしょう。僕のことはお気になさらず。たまたまここを通りかかった旅人ですから」

そう告げると、僕はそれ以上の詮索を避けるように話を切り上げ、二人を無事に屋敷まで送り届けた。

別れ際、僕はふと思い出したように口を開いた。

「ああ、そういえば、一つお聞きしたいことがあります」

「はい、なんでしょう?」

「ヴァリス・エテルニタスへ行くには、どうすればいいでしょうか?」

「ヴァリス・エテルニタスにですか? もしかして、エテルナの審判にご参加されるのですか?」

「ええ……そんなところですね」

内心では、早く行き方だけでも教えてくれと思っていた。僕はぎこちない笑みを浮かべ、令嬢の返答を待った。

「ヴァリス・エテルニタスへ向かわれるのでしたら、三日後に出る王都行きの馬車に乗ることをおすすめいたします。ただ……ヴァリス・エテルニタスへ行かれる際には、どうぞお気をつけください」

「えっ?」

令嬢はふいに表情を曇らせ、不安げな声で言葉を続けた。