☆ ☆ ☆
「お〜い……アレス、そろそろ休憩にしようぜ。さすがの俺でも……限界だわ」
ロキはそう言って、背中から地面にばったりと倒れ込んだ。同時に土埃がふわりと舞い上がる。
「ああ、そうだな。いったん休憩しよう」
俺はそう応じ、ロキに飲み物を投げて渡した。地面に寝転がったままのロキは、片手で器用にそれを受け取ると、ゆっくりと体を起こした。
「それで、アレス。魔人の力の引き出し方は分かったのか?」
ロキのその一言に、ドリンクのキャップを回していた俺の手が、ぴたりと止まった。数秒の沈黙が流れた後、俺は小さく息を吐いてから、顔を伏せ正直に答えた。
「いや、まだだ……」
俺は今、自分の体に流れる魔人の血から、その力を引き出そうとしていた。
ラスールでの戦い。
あのとき、俺は自分の血に流れる魔人の血に呼びかけ、今までにないくらいの力が内からこみ上げてくるのを感じた。おそらく、あれがエクレールさんが言っていた魔人族だけが使えるという『共振』だったのだろう。しかし、あの時はただ必死で、どうやってやったのか正直覚えていない。
ソフィアやエクレールさんに聞けば、何か突破口が見えてくるのかもしれない。だが、なるべく二人には頼りたくなかった。余計な心配をかけたくないという気持ちがあったからだ。
ラスールでの戦いで、俺は自分の力不足を痛感した。このままではソフィアを守れない。そう強く思った。
それに、俺はブラッドさんから魔剣エクレールを託された。今の俺じゃ、その力を使いこなすことなんてできない。あの時だって、ブラッドさんがいてくれたから、どうにか乗り切ることができたんだ。
「おいおい、そんな小難しい顔すんなよ。訓練で疲れてる顔じゃなくて、なんか深刻すぎるぞ」
「はは……そうだな」
乾いた笑いが喉から漏れる。その笑いは、俺自身の焦燥を誤魔化すにはあまりにも力なかった。
暗い表情で考え込んでいる俺を見かねたのか、ロキは突然、沈んだ空気を吹き飛ばすように快活な声を出した。
「そうだ! アレス! こいつを見てくれよ!」
ロキはそう言って、ズボンのポケットから大切そうに折りたたまれた厚手の紙を取り出し、歓喜を込めて掲げて見せる。それは、上質な紙を使った、格式高い招待状のように見えた。
ロキから受け取った俺は、その左下の印に目を留めた。精緻に刻まれたその紋章に見覚えがある。
「これって……確か、大魔導院の紋章じゃなかったか?」
そう口にした瞬間、ロキはまるで自分が偉大な魔法使いになったかのように自慢げに胸を張り、得意満面に口を開く。
「ふっふ〜ん、それはな、『エテルナの審判』への参加が正式に認められた、栄誉ある招待状だ!」
「エテルナの審判?」
「お前だって知ってるだろ? ほら、ヴァリス・エテルニタスで五年に一度開催されている、世界最高峰の魔法剣戟大会だよ!」
ヴァリス・エテルニタス──
『永遠の力』を意味する名を持つ、あらゆる魔道と剣技が世界中から集結する唯一無二の国。建国以来、人々は力そのものの探求に生涯を捧げてきたという。 国全体が巨大な研究都市であり修行場だ。街の至る所に訓練施設や魔術図書館が点在していると聞く。
大魔導院もそのうちの一つで、神剣学院と一緒に国を発展へと導いてきたと言う。
そして、五年に一度開催されるエテルナの審判。
それは、魔道と剣技の頂点を決める、最も権威ある祭典。大魔導院と神剣学院が共同で主催するこの大会には、世界各国から、次世代の英雄候補、腕に自信ある強者たちが集い、それぞれの分野で真の頂点に立つ者を決める。
それにロキが招待されたということは、彼の実力が公に認められた証だ。
「まさか、カレンも招待されたのか?」
「おそらくそうだと思うぜ。俺は師匠から直接受け取ったからな。大会は来月だって!」
ロキは今からその舞台に立つのが楽しみで仕方ないのだろう。瞳をキラキラと、まさに星を宿したように輝かせながら招待状を見下ろしている。
(……この喜びよう。やっぱり、ロキは凄いな)
焦燥に駆られる自分と、目標に向けて迷いなく進む友人の姿。俺は静かにそう思った。
「お〜い……アレス、そろそろ休憩にしようぜ。さすがの俺でも……限界だわ」
ロキはそう言って、背中から地面にばったりと倒れ込んだ。同時に土埃がふわりと舞い上がる。
「ああ、そうだな。いったん休憩しよう」
俺はそう応じ、ロキに飲み物を投げて渡した。地面に寝転がったままのロキは、片手で器用にそれを受け取ると、ゆっくりと体を起こした。
「それで、アレス。魔人の力の引き出し方は分かったのか?」
ロキのその一言に、ドリンクのキャップを回していた俺の手が、ぴたりと止まった。数秒の沈黙が流れた後、俺は小さく息を吐いてから、顔を伏せ正直に答えた。
「いや、まだだ……」
俺は今、自分の体に流れる魔人の血から、その力を引き出そうとしていた。
ラスールでの戦い。
あのとき、俺は自分の血に流れる魔人の血に呼びかけ、今までにないくらいの力が内からこみ上げてくるのを感じた。おそらく、あれがエクレールさんが言っていた魔人族だけが使えるという『共振』だったのだろう。しかし、あの時はただ必死で、どうやってやったのか正直覚えていない。
ソフィアやエクレールさんに聞けば、何か突破口が見えてくるのかもしれない。だが、なるべく二人には頼りたくなかった。余計な心配をかけたくないという気持ちがあったからだ。
ラスールでの戦いで、俺は自分の力不足を痛感した。このままではソフィアを守れない。そう強く思った。
それに、俺はブラッドさんから魔剣エクレールを託された。今の俺じゃ、その力を使いこなすことなんてできない。あの時だって、ブラッドさんがいてくれたから、どうにか乗り切ることができたんだ。
「おいおい、そんな小難しい顔すんなよ。訓練で疲れてる顔じゃなくて、なんか深刻すぎるぞ」
「はは……そうだな」
乾いた笑いが喉から漏れる。その笑いは、俺自身の焦燥を誤魔化すにはあまりにも力なかった。
暗い表情で考え込んでいる俺を見かねたのか、ロキは突然、沈んだ空気を吹き飛ばすように快活な声を出した。
「そうだ! アレス! こいつを見てくれよ!」
ロキはそう言って、ズボンのポケットから大切そうに折りたたまれた厚手の紙を取り出し、歓喜を込めて掲げて見せる。それは、上質な紙を使った、格式高い招待状のように見えた。
ロキから受け取った俺は、その左下の印に目を留めた。精緻に刻まれたその紋章に見覚えがある。
「これって……確か、大魔導院の紋章じゃなかったか?」
そう口にした瞬間、ロキはまるで自分が偉大な魔法使いになったかのように自慢げに胸を張り、得意満面に口を開く。
「ふっふ〜ん、それはな、『エテルナの審判』への参加が正式に認められた、栄誉ある招待状だ!」
「エテルナの審判?」
「お前だって知ってるだろ? ほら、ヴァリス・エテルニタスで五年に一度開催されている、世界最高峰の魔法剣戟大会だよ!」
ヴァリス・エテルニタス──
『永遠の力』を意味する名を持つ、あらゆる魔道と剣技が世界中から集結する唯一無二の国。建国以来、人々は力そのものの探求に生涯を捧げてきたという。 国全体が巨大な研究都市であり修行場だ。街の至る所に訓練施設や魔術図書館が点在していると聞く。
大魔導院もそのうちの一つで、神剣学院と一緒に国を発展へと導いてきたと言う。
そして、五年に一度開催されるエテルナの審判。
それは、魔道と剣技の頂点を決める、最も権威ある祭典。大魔導院と神剣学院が共同で主催するこの大会には、世界各国から、次世代の英雄候補、腕に自信ある強者たちが集い、それぞれの分野で真の頂点に立つ者を決める。
それにロキが招待されたということは、彼の実力が公に認められた証だ。
「まさか、カレンも招待されたのか?」
「おそらくそうだと思うぜ。俺は師匠から直接受け取ったからな。大会は来月だって!」
ロキは今からその舞台に立つのが楽しみで仕方ないのだろう。瞳をキラキラと、まさに星を宿したように輝かせながら招待状を見下ろしている。
(……この喜びよう。やっぱり、ロキは凄いな)
焦燥に駆られる自分と、目標に向けて迷いなく進む友人の姿。俺は静かにそう思った。



