ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

「……カレン、お前はあいつが好きなのか?」

サファイアは少し間を置いてから、何かを確かめるように尋ねてきた。

私の言葉は、そんなにも突飛なものだったのだろうか。

「はい。私は先生を愛しています。私の初恋は、先生ですから」

私がはっきりと告げると、サファイアは困ったように額に手を当てた。

「カレン、あいつは……」

そう言いかけた彼女は、続く言葉を探すように口をつぐんだ。

「分かっています、サファイア」

彼女がその名前を口にする前に、私は言葉を継いだ。

「先生が心から愛している人がいることは、十分に理解しています。もちろん、私のこの想いが先生に届くことは、決してないということも」

「じゃあ、なんで……」

サファイアは、信じられないというような顔で私を見つめた。

その表情は、かつての私自身を映しているようだった。目的もなく、ただ与えられた役割をこなすことに必死だった、あの頃の私を。

「先生はこれまで、その人のため(・・・・・・)に歩んできました。その覚悟がどれほどのものなのか、きっと誰にも想像できないと思います。先生にとって、私は目的を果たすための存在にすぎないのかもしれません」

私の言葉に、サファイアは返す言葉を失った。

先生は自身を『エアの代行者』と名乗り、エアに代わって目的を果たすために行動している。そして、この世界を平和にする義務があるのだと語っていた。

けれど、先生はエアのことを心から嫌っている。いや、心から憎んでいると言っても過言ではないのかもしれない。彼女の名前を口にするだけでも、先生は心底嫌そうな顔をしていたからだ。

それなら、なぜ先生は自らを『エアの代行者』と名乗るのだろう。

ラスールで、アレスたちに魔剣や守護者について語る先生の姿を見て以来、私はその疑問を抱いていた。

もし、先生の言う『エアの代行者』の『エア』が、サファイアたちの知るエアではなく、『オフィーリア』様を指しているのだとしたら。

そう考えれば、これまで私が抱いていたいくつかの疑問にも、答えが見つかる気がした。

先生がオフィーリア様について語ってくれた時の姿を思い出すたびに、私の胸は強く締め付けられた。

「サファイア……だからこそ、私は先生に追いつかないといけないの」

「それは、どういう……?」

「だって、いったい誰が先生を守ってくれるというのですか?」

私の言葉に、サファイアは大きく目を見開いた。

「先生は確かに強い人です。でも、その強さだって、いつか限界を迎えるはずです。その時、先生のそばに誰もいなかったら、いったい誰が先生の手を取るというんですか?」

私は、先生の姿を思い浮かべた。

「先生はきっと、最後まで一人で戦おうとする。誰にも頼ろうとしない」

言葉を重ねるうちに、私の声は震えていた。

それは恐怖でも、悲しみでもない。

彼を守りたいと願う、純粋で強い決意の震えだった。

「だから私は、先生の隣に立つにふさわしい存在になりたいんです。先生が一人ですべてを背負わなくてもいいように。少しでも、その重荷を分かち合えるように」

私はサファイアをまっすぐに見つめた。

「それが、私にとっての『先生に追いつく』ということなんです」