ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

「カレン。君が魔剣サファイアに選ばれたことは、特別なことを意味する。サファイアにとって、君は唯一無二の存在なんだ」

先生の言葉に、私の青紫色の瞳は大きく見開かれた。

唯一無二――

それは、誰かにとって唯一の存在になれたということ。その実感が胸に広がり、両目から涙がこぼれ落ちた。

「えっ!?」

私が突然泣き出したことに、先生はひどく慌てた様子で、どうしたらいいのか分からずオロオロしている。
彼は自身を落ち着かせるように、もう一度咳払いをした後、私に右手をかざした。

「いいかい、よく見てて」

先生はそう言うと、かざした右手をぎゅっと握りしめ、手の中から一輪の薔薇を出して見せた。

「す、すごい!」

初めて見る手品に、私の心は興奮で高鳴った。たしかに今、彼の右手には何もなかった。何かを隠す布もなかった。彼は本当に、何も持っていなかった手の中から、薔薇を取り出してみせたのだ。

「こう見えて、俺はマジックが得意なんだ。昔はマジックを使って怪盗をやってたり……あぁ、いや、こんな話はいいんだ」

先生は私の目尻に浮かんだ涙を、指先で優しく掬うと、微笑んだ。そんな彼の優しい表情に、私の胸は大きく高鳴った。

「俺は、ずっと君を探していた。だからこうして出会えて、とても嬉しいんだ」

そんな言葉、お兄様以外に言われたことがなかった。

もしかして、今の私は彼に必要とされているのだろうか? そんな考えが頭をよぎった。

「詳しい説明は、また明日する。だから、明日もここで待っててくれるか?」

「また、会いに来てくれるんですか?」

「ああ、もちろんだ」

その言葉を聞いて、私の顔はぱっと輝いた。

「えっ……罪な男? オフィーリアがいるのに……って、お前ら何を言ってるんだ……」

先生は、まるで誰かと話しているかのように、ぶつぶつと奇妙なことをつぶやいていた。そんな彼の姿が少し面白くて、私は思わず笑ってしまった。

「だからお前は、ブラッドに追いつきたいのか? 恩を返すために」

サファイアの問いかけに、私は迷うことなく首を横に振った。

「たしかに、先生には恩を感じています。でも、それが理由ではありません。理由は……とてもシンプルです」

私は少し頬を赤く染めながら、サファイアへ視線を戻した。

「私が先生を追いかけるのは、彼を愛しているからです」

「っ!」

予想もしなかった言葉が飛び出したことに、サファイアは何度も目を瞬かせた。