ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

「カレン、今日はここまでだ」

乱れた息を整え、額に浮かんだ汗を拭う。深く息を吸って吐くたびに、激しく脈打つ心臓の音が、耳の奥でいつまでも響いていた。

「はぁ……はぁ……」

そんな私を見ていたサファイアが、何も言わずにタオルを差し出してくれた。

「ありがとう、サファイア」

私は微笑んでタオルを受け取った。すると、彼女はまっすぐな瞳で私を見つめた。

「カレン、毎日こんなに特訓しなくてもいいんだぞ? このままじゃ、お前の体がもたない」

「……そうはいきません」

脳裏に、先生から告げられた言葉が蘇る。

――カレン、お前をこの旅に同行させる気はない。

「……っ。少しでも早く、先生に追いつかないといけないんですから」

先生に追いつくためには、一日でも早く、サファイアの氷結の力を制御できるようにならなければならない。

『カレン、お前に一つ命令をしておく。サファイアの氷結の力を二度と使うな』

その言葉は、まるで胸を鈍器で殴られたかのように、私の心に重くのしかかった。

悔しさに、奥歯を強く噛みしめる。

ようやくサファイアに認められたというのに、先生は私を遠ざけるかのように、残酷な言葉を言い放った。

先生は、サファイアの氷結の力は命を削るものだと言っていた。

あのラスールでの一件で、私はその代償を身をもって知った。

身体中が分厚い氷に覆われ、手足の感覚が徐々に失われていく。魔力回路を流れる氷結の力が暴走し、私の体を内側から壊そうとしていた。

あのとき、先生がいなければ、私はどうなっていたか分からない。

後遺症もなく、こうして普段どおりの生活を送れているのは、先生が私を止めてくれたからだ。

けれど、その事実は、私自身の未熟さを痛感させるものでもあった。

早くサファイアに認められたい。早く先生に追いつきたい。

その一心で、私はひたすらに鍛錬を重ねてきた。

だが、それでもまだ足りない。

未熟な私には、まだこの力を制御することができないのだ。

「……早く、コントロールできるようにならないと」

小さく呟き、サファイアと同じ青紫色の瞳を鋭く細める。

サファイアは、そんな私の姿をただじっと見つめていた。

「カレン。どうして、お前はそんなにブラッドに追いつきたいと願うんだ?」

「えっ?」

サファイアの突然の問いかけに、思わず間の抜けた声が漏れた。

「ど、どうしてそんなことを聞くのですか?」

「いや、ずっと気になっていたんだ」

そう答えた彼女は、どこか懐かしむように空を見上げた。