ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

☆ ☆ ☆

「カレン、今日はここまでだ」

乱れた息を整え、額に浮かんだ汗を拭いながら深呼吸をする。心臓がドクドクと脈打つ音が、耳の奥でまだ響いていた。

「はぁ……はぁ……」

その様子を見ていたサファイアが、何も言わずにタオルを手渡してくれる。

「ありがとう、サファイア」

優しく微笑んで受け取ると、彼女はまっすぐな瞳で私を見つめた。

「カレン、毎日特訓しなくてもいいんだぞ? このままだとお前の体がもたない」

「……そうはいきません」

脳裏に、先生に言われた一言が蘇る。

――カレン、お前をこの旅に同行させる気はない。

「……っ。少しでも早く、先生に追いつかないといけないですから」

先生に追いつくためには、一日でも早く、サファイアの氷結の力をコントロールできるようにならなければ。

「カレン、お前に一つ命令をしておく。サファイアの氷結の力を二度と使うな」

その言葉が、私の心臓を鈍器で殴りつけたかのように強く響いた。悔しさで奥歯を強く噛みしめる。

ようやくサファイアに認められたというのに、先生は私を遠ざけるように、そんな残酷な言葉を言い放った。

先生は、サファイアの力は命を削るものだと言っていた。あのラスールでの一件で、私はその代償を身をもって知った。身体中が分厚い氷に覆われ、手足の感覚が徐々に失われていく。魔力回路に流れる氷結の力が暴走し、私の体を内側から壊そうとしていた。

あのとき、先生がいなければ私はどうなっていたかわからない。後遺症もなく、こうして普通の生活を送ることができているのは、先生が私を止めてくれたからだ。

しかし、その事実、私自身の未熟さを痛感させるものだった。

早くサファイアに認められたくて、早く先生に追いつきたくて、私はひたすらに鍛錬を重ねてきた。

だが、それでもまだ足りない。未熟なせいで、力をコントロールすることができない。

「……早く、コントロールできるようにならないと」

小さく呟き、サファイアと同じ青紫色の瞳を鋭く細める。

サファイアは、そんな私の姿をただじっと見つめていた。

「カレン。どうして、お前はそんなにブラッドに追いつきたいと願うんだ?」

「えっ?」

サファイアの突然の問いかけに、思わず間抜けな声が漏れた。

「ど、どうしてそんなことを聞くのですか?」

「いや、ずっと気になっていたんだ」

彼女はそう言うと、どこか懐かしむように空を見上げた。