ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

『エレノアは、ソフィアに託したんだ。自分たちでは叶えられなかった、人間族との共存を。それを、今の彼女は実現できている』

リヴァイの言葉に、アレスたちと笑い合うソフィアちゃんの姿が、鮮明に脳裏に浮かんだ。

彼の言う通り、ソフィアちゃんは彼らと共に生きている。それは、魔人族全員が望んでいた光景だった。

種族の垣根を越え、ただ手を取り合って生きていく未来。それはあまりにも美しく、尊いものだった。

「リヴァイ……ソフィアちゃんは、確かにエレノアちゃんの願いを叶えてくれました。ですが、わたくしは……わたくし自身が抱えている罪悪感から、ソフィアちゃんに真実を話すことができません」

『お前だけが背負うことじゃない。分かっているだろう、エル。お前はただ、あの子を守りたかったんだ』

「それは……わたくしが、そう信じたいだけなのです。もしソフィアちゃんが、わたくしの隠している真実を知ったら……」

『それでも、あの子はお前を責めたりはしない。お前がソフィアを大切に思っていることを、あの子はちゃんと知っているから』

リヴァイのまっすぐな瞳が、わたくしの心を見透かすように向けられる。

その言葉が、胸の奥にじんわりと染み渡った。

『エル。ラスールに現れた黒い粒子の正体は、暴食の悪魔だった』

その名を聞いた瞬間、全身に鋭い痛みが走ったような気がした。

かつて、魔人族を狂わせたあの忌まわしい記憶が蘇る。

『あいつはソフィアを狙っていた。だが、俺がそいつを片付けておいた。だから、もうソフィアが狙われる心配はないだろう』

「では、暴食の悪魔は完全にいなくなったのですか?」

『……それは断言できない』

リヴァイはそう言うと、目を細めて窓の外を見つめた。その表情には、どこか警戒の色が浮かんでいた。

「まだ、気がかりなことがあるのですか?」

『あいつは言っていた。七つの悪魔たちは、全員すでにこちら側へ来ている、と』

「そんな……」

七つの悪魔たちの存在は、トト様が封じているはずです。それなのに、どうして彼らが……。

『あいつらがどんな目的でこの世界に来たのかは分からない。黒焔の太陽を復活させるためか、それとも別の目的があるのか……。だが、もうすぐこの世界に何らかの変化が起きるのは間違いない』

リヴァイの言葉は、まるで世界の行く末を予言しているかのようだった。

わたくしは不安に駆られ、彼に尋ねた。

「リヴァイ、あなたはいつ目覚められるのですか? このままでは……また、あなたがいない間に何かが起きてしまいます」

わたくしの問いかけに、リヴァイは数秒間、沈黙した。

『……今は断言できない。だが、ラスールの一件で、俺の意識は少しずつ目覚め始めている。だから今は、ソフィアとアレスのそばにいてやることができる』

「アレス……ですか?」

そういえば、アレスは自分の血にソフィアちゃんと同じ魔人の血が流れていると言っていた。

「リヴァイ、もしかしてアレスに力を貸したのは、あなたなのですか?」

『……』

わたくしの問いかけに、リヴァイは何も言わず、そっと顔を背けた。

その反応は、まるで何かを隠しているかのようだった。わたくしは思わず眉をひそめる。

「リヴァイ? もしかして、わたくしに言えないことでも隠しているのですか?」

『……隠してなんかない。ただ、今は話す時じゃないだけだ』

「リ〜ヴァ〜イ?」

わたくしが怒りを込めた笑顔で名前を呼ぶと、リヴァイはそれに気づいたのか、慌ててわたくしから距離を取った。

半透明の身体だというのに、まるで実体があるかのように後ずさる。

『……エル。お前に頼みがある』

「え?」

リヴァイが、わたくしに頼みたいこと?

彼は真剣な眼差しをわたくしに向けると、口元を覆っていたスカーフを下ろし、口を開いた。

その瞳には、かつてわたくしたちが共に戦っていた頃と同じ、力強い光が宿っていた。