ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

「あなたたちが話している時、私はあの場に居なかったわよ」

「えっ!?」

テトの言葉に私の声が上ずった。テトだったら絶対聞いているって思っていたのに……珍しい。

「私だって、場の空気くらい読むわよ。本当はエクレールの話、私も聞きたかったけど、あの人がすごい圧を私に向けていたのよ。まるで、『絶対についてこないでください』とでも言っているみたいに」

​「それって、どうして?」

​私は苦笑しながらテトに問いかけた。テトは両手を上げて肩をすくめる。

「さあね。誰にも話を聞かれたくなかったのか、それともただ単純に、ソフィアとの二人きりの時間を邪魔されたくなかったのか。どうせなら後者だといいわね」

「そ、そんな事はないと思うけど」

エクレールさんは確かに……いや、確実に私のことが大好きだ。

それはこの三ヶ月で嫌というほど思い知らされたからだ。

どこへ行くにも私の後をついてくるし、ご飯を食べる時は『あ~ん』といいながら食べさせようとしてくる。

アレスが来たときなんて、『ソフィアちゃんの隣は絶対譲りません』と言わんばかりの圧を感じたことがある。

最初は気のせいだと思っていたけど、最近は気のせいじゃないような気がしていた。

​「まあ、私から言えることがあるとすれば、彼女の言うことは信用してもいいと思うわよ。あの魔人王と手を組んだ人だし、何より魔人族について詳しい。あなたが知らないことも、彼女が知っている可能性だってあるから」

​テトはそう言いながら、私の頬を尻尾で軽く撫でた。その柔らかな感触に、少しだけ心が落ち着く。

「焦らなくていいわ。時間はたっぷりあるし、あなたがどうしてここにいるのかだって、いずれわかる時がくるから」

「うん、そうだね」

テトの言う通りだ。今は、自分が魔人族であることがはっきりしただけで十分だ。焦ってはいけない。

「ほら、さっさと行くわよ。このままだと本当に学校に遅刻するわよ」

テトが急かすように私の背中を小さな手で突いた。

「うん!行こっか、テト」

​私は微笑み、テトと部屋を出て学校へ向かった。