「ある日、ある町の人々が、魔人族を一網打尽にしようと大勢で襲ってきたことがありました。魔人族たちが暮らしていた隠れ家が見つかってしまったのです」

​エクレールさんの声が、わずかに震えた。

​「その時、わたくしを探しに来ていた竜人族たちが、偶然にも近くにいたのです。わたくしは彼らと協力し、襲ってきた人々を追い返しました。その戦いの中、彼はわたくしの戦いぶりを、そしてわたくしが本当に魔人族を、彼を守ろうとしていることを、ようやく信じてくれたのです」

​エクレールさんの瞳に、その時の情景が蘇ったかのように、強い光が宿る。

​「戦いが終わった後、彼は……リヴァイは、わたくしの前に跪き、言いました。『お前を信じる』と。そして、わたくしたちは約束を交わしました。この先、何があろうと互いに力を合わせ、守り抜くと」

​その言葉は、まるで目の前でリヴァイバルさんが語りかけているかのように、私の胸に響いた。

​「その約束を交わしてから、わたくしたちは互いのことを深く知るようになり、やがて彼は、わたくしに魔人族のすべてを託してくれました」

​エクレールさんはそう言って、もう一度窓の外に視線を向けた。その瞳は、懐かしさと、少しの悲しみを帯びているように見えた。

​「ですが……わたくしは、彼が託してくれたものを守りきることができませんでした」

​そう呟くと、彼女の目から一粒の涙がこぼれ落ちた。

​その瞬間、私の目からもポロポロと涙が止めどなくあふれ出した。

どうして、涙が止まらないのか。

どうして、エクレールさんの話を聞いて『あなたのせいではない』と叫んでいる自分がいるのか。

初めて聞くはずの出来事なのに、まるでそのすべてを自分も経験してきたかのような、不思議な感覚に陥っていた。

​「だから、ソフィアちゃん」

​「……はい」

​「わたくしは、あなたがこうして生きていてくれて、本当に嬉しかったのです。エレノアちゃんの、そしてリヴァイにとって大切な人が、今、わたくしの目の前にいる。それがとても……とっても嬉しいのです」

​その言葉を聞いた途端、私の頬を伝っていた涙は、大粒の雫となってボロボロとこぼれ落ちた。

​「ソフィアちゃん、生まれてきてくれて……ありがとうございます」

​エクレールはそう言って、涙を流しながらも、優しい笑顔を浮かべていた。