白狐に選ばれた下女、皇后となりて

 時は流れ、瑶光は皇后として確固たる地位を築いていた。
 皇帝は彼女を『国の目』と呼び、民の困り事をいち早く皇帝に伝える役割を担っていた。

「市場の米が少し高騰しているようです」
「南の村の井戸が枯れかけています」
「数日後、大雨が降ります」

 そうした声を一つひとつ拾い上げ、皇帝や大臣たちとともに対策を講じた。
 白狐はというと、瑶光のもとに控えている時もあれば、赤子の世話をしていることもあった。


「白狐は、皇子様を守っているのですね」
「まるで、神獣が次の主を見守っているようです」

 やがて宮中では、そんな言葉が囁かれるようになった。
 次の世代も安泰である。その安心感が国中の平和の礎となっていた。



 ある夜、瑶光と皇帝は庭に佇んでいた。
 すると、白狐がどこからともなくやって来て、瑶光の足に頬ずりをした。

「白狐か。この時間に瑶光のもとへ来るのは珍しいな」
「そうですね。一緒に散策がしたかったのでしょうか」

 白狐は二人をじっと見つめると、ぴょんと一度だけ跳ねた。

「あらあら。……どうしてあなたは私を選んでくれたのでしょう。不思議なご縁です」

 瑶光は囁いた。
 白狐はなにも答えなかったが、心地良さそうに尾を振っていた。

「ふふふっ、くすぐったいです」

 瑶光は空を見上げた。
 月が静かに輝いている。まるでここにいる者たちを祝福しているようだ。

「玄明様、私、今とても幸せです」
「そうだな」
「この幸せがいつまでも続くよう、ともに励みましょうね」
「あぁ」

 すると白狐がぼんやりと白く光り、二人を照らすように跳び跳ねた。
 後にその姿が『瑞祥』だと、国中が喜びに包まれたのだった。

【完】