彼もワタシも、燃え尽き症候群。

年齢なんて関係ない。
晩婚化。第一子を産んだ年齢が高齢化。

そんなニュースをよく見るようになった。

たしかに私のまわりで結婚していない友人はいるし、SNSでもわらわらといる。

私も結婚予定はない。
それどころか彼氏もいたことない拗らせ女なわけでして。


そんな女がいわゆる晩婚を過ぎてしまう恐れを抱けば、どうなるのでしょう?

焦らなくていい。
独り身は増えてるし、大丈夫さ。

そんなことはわかってる。

でもそれは綺麗事だ。

未来は独り身が当たり前じゃないかもしれない。

ニュースで「第一次ノーサンクスベビーブーム世代」と揶揄されるようになってるかも。

今、独り身を謳歌してる子はみんな趣味がある。

男がいなくても幸せな生き方をもっているから振り回されないんだ。

私みたいに会社と家の往復。

趣味もなく、ショート動画垂れ流しの人生を送れば、これから語る「ある終電の思い出」がいかに苦いものか、わかるでしょう――。




新卒入社した会社で、いつのまにか新人を名乗れなくなった頃。

いまだわからないことばかりだと根をあげたいが、みんな私を中堅認識しているからそれっぽい顔をしなくてはならない。

今さら転職となれど、役職があるわけでもないので給料が上がる見込みもない。

その活動さえ、気力が湧かぬ。

とりあえずどこの会社にも不足しがちな年齢であることが私の生存を許していた。


「改めまして、水島 郁斗です。営業一課として配属されます。よろしくお願いします」


気の進まない月曜日の、惰性で続く朝礼。

ボーッと後ろに立ち、『今日はあれこれ進めて、あれを終わらせて』と一日でやることを頭の中でリスト化し反芻する。

なんとなく聞き覚えのある声にハッと顔をあげると、時々見かけていた同い年の男性と目が合った。

ペコリと苦笑いで挨拶をされ、同じように返す。

そういえば取引先から引き抜いて、今日から同じ部署仲間になると上司が言っていた。

爽やかな笑顔にスマートな仕事ぶり。

彼はすぐに社内でおばちゃんたちの人気者になった。

引き抜かれたというのもあり、彼の仕事覚えは早いどころか次々と大きな仕事を任されている。

入ったばかりで有能すぎた彼は、逆におばちゃんたちの心配されてバランスよく仕事を手伝ってもらっていた。



正直、中堅とはいえ私は会社の人たちが苦手だ。

新卒で入った私よりも、長い在籍年数のおばちゃんたち。

だからなんでも器用にこなし、いつのまにか私よりも仕事をこなしていく彼に嫉妬していた。


それくらいしか、私には生存理由がない。

仕事でも中途半端な立ち位置では、どこに生きればいいのか。

結婚に向かってそうそうに退職し、今では二人目を育てている友人。

仕事が楽しいとどんどん出世していくかと思えば、たくさんのコネクションを作ってフリーランスになる友人。

仕事は最低限、推し活に人生を注いで全国を飛び回る友人。

私には何もなかった。

せいぜい、残業して毎日疲れることが役割だ。



水島 郁斗が入社して半年。


彼は私よりも仕事量を抱えているのに、なぜ私は中途半端な量で残業をしているのか。

情けなさと虚しさに、バカみたいにエナジードリンクで頑張ってます感を出す。

なんとなく程度には力をくれるから、やめるにやめられないパワー注入だった。


とはいえ、終電は逃したくない。

帰れないのはさすがに捨て過ぎてると、会社を出てコンビニでノンアルコールビールを買う。

ノンアルコールとはいえ、エナジードリンクで一度ハイになった身だ。気分で何でも出来そうな浮き足立つ感覚に陥っていた。


『•*¨*•.¸¸♬︎•*¨*•.¸¸ドアが閉まります。ご注意ください』

「あー!! 待って!! 待っーー」

『プシュー、バタン……』

ガタンゴトン、ガタンゴトン……。

やらかした。

間に合うだろうと余裕をかまし、結局はダッシュして階段を降りきらないうちに電車は行ってしまった。

ヤケクソに残業して、終電を逃すとはバカみたいだ。

自分を憐れむわざとらしさに涙も出てこない。

改札から出て途方に暮れた私はスマートフォン片手に、今晩過ごす場所を検索していた。

「……あー。漫喫、どこかあったかなぁ?」

「高橋さん?」

ほんのり頬を赤らめた彼がいた。