「剛力さん。今日はありがとうございます」
 待ち合わせ場所である東京湾が見渡せる浜辺に、真面目くんは既に居た。灰色のTシャツにピシッとジーパンを履き、変わらずの猫っ毛に丸渕メガネ。
 ……ん? 何でだろう? 分からないけど、学校と何かが違うような気がする。制服だけじゃない何かが。
「どうかしました?」
「別に。……それより真面目くんの為じゃないし。約束分かってる?」
「はい、今日のオフ会に参加してくれたら剛力さんがJKボカロP Akiraさんと言わない約束です」
「よろしい!」
 脅されている立場のはずなのに、どうして私が威張っているのだろうか?
 どうして脅している方が、ヘコヘコしているのか?
 何でそこまでして、オフ会に参加させたいのか?
 よく分からんけど、今日だけのこと。気にしないことに決めた。