1866年(慶應二年)春。
徳川14代将軍、徳川家茂が江戸を離れて久しい。
「みごとな桜」
18才になった藍は清楚な細身の少女である。桜を見上げ感嘆の声をあげた。
風に煽られ桜の木が揺れ花弁が舞う。
藍は「あっ」と呟き、風呂敷包みを抱え直し、烏の濡れ羽色の長い髪を押さえた。
川沿いに桜並木が続く。
数日前。
瓦版屋が、川開きに第14代将軍徳川家茂公が花火大会を御観覧になられるとの瓦版を発行し、市井江戸八百屋町は久方ぶりに活気に溢れているように見える。
桜並木を歩きながら、遠目に見える一際派手な装飾を施した御座船にチラッと目を移し、藍は微かに口角を上げた。
あの船の上で私は今日、積年の思いを遂げる。失敗はできない。
絶対に!
藍は、緊張の中にもみなぎる決意に胸の高鳴りを抑える。
徳川14代将軍、徳川家茂が江戸を離れて久しい。
「みごとな桜」
18才になった藍は清楚な細身の少女である。桜を見上げ感嘆の声をあげた。
風に煽られ桜の木が揺れ花弁が舞う。
藍は「あっ」と呟き、風呂敷包みを抱え直し、烏の濡れ羽色の長い髪を押さえた。
川沿いに桜並木が続く。
数日前。
瓦版屋が、川開きに第14代将軍徳川家茂公が花火大会を御観覧になられるとの瓦版を発行し、市井江戸八百屋町は久方ぶりに活気に溢れているように見える。
桜並木を歩きながら、遠目に見える一際派手な装飾を施した御座船にチラッと目を移し、藍は微かに口角を上げた。
あの船の上で私は今日、積年の思いを遂げる。失敗はできない。
絶対に!
藍は、緊張の中にもみなぎる決意に胸の高鳴りを抑える。


