「ど、どうしたら」
スマホを取り出し家に助けを求めようとしたが、残念なことに電波がなかった。どうやら電波まで遮断するタイプの妖らしい。こんな妖を相手にしたことが無い。自分の力のなさをまざまざと見せつけられた。
どうしよう。
それだけしか頭に浮かばなかった。膝をついたまま、茉優が消えていった床をじっと見るだけしかできない。人の血肉を喰らって、自分自身を強くするのが妖。一刻も早く茉優を助けないと。わかっているけど、何もできない。悔しさだけが湧いて出て来る。
「そこの女子生徒、早くお家に帰りなさい」
何をこんな時にのんびりなことを言って。
振り返るとそこにいたのは、三善先生だった。いつもの白衣姿ではなく、真っ黒なスーツを着ていた。
「せ、先生。どうして」
「それはコッチのセリフだ。どうして早く帰らなかったんだ」
「だ、だって気配が」
「あのな、それは」
どぷん。
またどこからか波が打ち寄せるような音が聞こえた。次の瞬間に結菜の左足が何かの液体に飲み込まれていき始めていた。抜け出そうと逃げ出そうとすればするほど、深みにはまっていってしまう。どうにかして、抜け出さないと。
「滅」
軽い爆発音と共に、液体が蒸発して消えた。のみこまれていたはずの左足は、元通り床の上にあった。もちろん、結菜の体から切り離されてもいない。
「めんどくせぇな」
舌打ちをした三善先生は腕を下ろした。
「あ、あの茉優が」
「そいつだけじゃねぇ、学校に残っていた全員が喰われた」
「え」
「この状況を早くどうにかしねぇと全員殺される」
淡々と言った三善先生の顔を見ると、そこには何の感情もなかった。化学の授業で見る先生とは全く違うその顔に、結菜はごくりと喉を鳴らした。自分の胸の上をギュッと握って、結菜は先生に言う。
「わ、私にもできることがあれば」
「なんもねぇよ」
「で、でも」
「お前ひとり増えたところで足手まといは変わんねぇよ」
足手まとい。
まさしくその通りだ。今の結菜にできることは何もない。視えるだけしかできない陰陽師の末裔には。
「協会には連絡入れてあるから時期に助けも来る。それまでは俺の傍を離れるな」
「え?」
スマホを取り出し家に助けを求めようとしたが、残念なことに電波がなかった。どうやら電波まで遮断するタイプの妖らしい。こんな妖を相手にしたことが無い。自分の力のなさをまざまざと見せつけられた。
どうしよう。
それだけしか頭に浮かばなかった。膝をついたまま、茉優が消えていった床をじっと見るだけしかできない。人の血肉を喰らって、自分自身を強くするのが妖。一刻も早く茉優を助けないと。わかっているけど、何もできない。悔しさだけが湧いて出て来る。
「そこの女子生徒、早くお家に帰りなさい」
何をこんな時にのんびりなことを言って。
振り返るとそこにいたのは、三善先生だった。いつもの白衣姿ではなく、真っ黒なスーツを着ていた。
「せ、先生。どうして」
「それはコッチのセリフだ。どうして早く帰らなかったんだ」
「だ、だって気配が」
「あのな、それは」
どぷん。
またどこからか波が打ち寄せるような音が聞こえた。次の瞬間に結菜の左足が何かの液体に飲み込まれていき始めていた。抜け出そうと逃げ出そうとすればするほど、深みにはまっていってしまう。どうにかして、抜け出さないと。
「滅」
軽い爆発音と共に、液体が蒸発して消えた。のみこまれていたはずの左足は、元通り床の上にあった。もちろん、結菜の体から切り離されてもいない。
「めんどくせぇな」
舌打ちをした三善先生は腕を下ろした。
「あ、あの茉優が」
「そいつだけじゃねぇ、学校に残っていた全員が喰われた」
「え」
「この状況を早くどうにかしねぇと全員殺される」
淡々と言った三善先生の顔を見ると、そこには何の感情もなかった。化学の授業で見る先生とは全く違うその顔に、結菜はごくりと喉を鳴らした。自分の胸の上をギュッと握って、結菜は先生に言う。
「わ、私にもできることがあれば」
「なんもねぇよ」
「で、でも」
「お前ひとり増えたところで足手まといは変わんねぇよ」
足手まとい。
まさしくその通りだ。今の結菜にできることは何もない。視えるだけしかできない陰陽師の末裔には。
「協会には連絡入れてあるから時期に助けも来る。それまでは俺の傍を離れるな」
「え?」



