そう考えたところで、もう一度足を止めた。
もし。もしも、自分が妖の気配に気づいていたのに、術者協会へ通報しなかったらどうなるのか。人的な被害まで広がりやしないだろうか。
「結菜、行くよ?」
「あ、ごめん。ちょっと教室に忘れ物しちゃって」
「おっけー、おっけー。ここで待ってるよ」
「ごめん。遅かったら、帰って良いから」
「不審者出てきているのに、一人で帰るの危ないから待ってるって」
「ありがとっ」
茉優に礼だけ言って、結菜は上履きに履き替えなおした。
ここ数日でこれだけ妖の気配を感じるのは、明らかに頻度が高すぎる。この違和感がどこからかが分かれば、家に連絡すれば良い。何事も無ければ、ただの気のせいで済むんだ。
気配の先を慎重にたどりながら、結菜は校舎内を歩く。
放課後になったせいか、教室の中は空っぽだった。模試が近いからだろうか。それでも奇妙だ。今は試験期間中ではない。不審者情報が出回って、どの部活も帰宅指示が出たのか。いや、少なくとも結菜のクラスのホームルームでは何も連絡がなかった。
だから、部活をやっている人が一人もいないのは普通じゃない。
階段をゆっくりと昇っていくと、どんどん瘴気が濃くなっている気がする。強い妖がいるのだろうか。そうであれば、術者協会からすぐに術者が派遣されているはず。こんなに野放しの状態になるはずがない。
バチン。
急に電気が落ちた。外を見ようにも、窓の向こう側は真っ暗で何も見えない。一体、どうして。
そこまで考えたところで、結菜は慌てて昇降口に戻った。途中誰一人すれ違うことなく、昇降口に戻ると、下駄箱に背を預けてスマホを見ている茉優がいた。
「茉優っ」
呼びかけても、反応が無い。
結菜が茉優に駆け寄ると、茉優の口を黒い液体上の何かが口を塞いでいた。目は虚ろになっていて、何も映していない。
呼びかけながら、肩を揺さぶろうとしたところで、とぷん、という音が聞こえた。振り向いたがそこには何もなかった。気のせいだろうか。と、思ったところで、急に茉優の肩が下がった。慌てて茉優を見ると、床に飲み込まれて行ってしまった。
「茉優っ」
慌てて後を追おうとして、結菜が手を伸ばしたが間に合わなかった。茉優を飲み込んだところで、床は元の床に戻ってしまった。何度か床を両手で叩くが、固く、手だけがジンジンと痛んだ。
もし。もしも、自分が妖の気配に気づいていたのに、術者協会へ通報しなかったらどうなるのか。人的な被害まで広がりやしないだろうか。
「結菜、行くよ?」
「あ、ごめん。ちょっと教室に忘れ物しちゃって」
「おっけー、おっけー。ここで待ってるよ」
「ごめん。遅かったら、帰って良いから」
「不審者出てきているのに、一人で帰るの危ないから待ってるって」
「ありがとっ」
茉優に礼だけ言って、結菜は上履きに履き替えなおした。
ここ数日でこれだけ妖の気配を感じるのは、明らかに頻度が高すぎる。この違和感がどこからかが分かれば、家に連絡すれば良い。何事も無ければ、ただの気のせいで済むんだ。
気配の先を慎重にたどりながら、結菜は校舎内を歩く。
放課後になったせいか、教室の中は空っぽだった。模試が近いからだろうか。それでも奇妙だ。今は試験期間中ではない。不審者情報が出回って、どの部活も帰宅指示が出たのか。いや、少なくとも結菜のクラスのホームルームでは何も連絡がなかった。
だから、部活をやっている人が一人もいないのは普通じゃない。
階段をゆっくりと昇っていくと、どんどん瘴気が濃くなっている気がする。強い妖がいるのだろうか。そうであれば、術者協会からすぐに術者が派遣されているはず。こんなに野放しの状態になるはずがない。
バチン。
急に電気が落ちた。外を見ようにも、窓の向こう側は真っ暗で何も見えない。一体、どうして。
そこまで考えたところで、結菜は慌てて昇降口に戻った。途中誰一人すれ違うことなく、昇降口に戻ると、下駄箱に背を預けてスマホを見ている茉優がいた。
「茉優っ」
呼びかけても、反応が無い。
結菜が茉優に駆け寄ると、茉優の口を黒い液体上の何かが口を塞いでいた。目は虚ろになっていて、何も映していない。
呼びかけながら、肩を揺さぶろうとしたところで、とぷん、という音が聞こえた。振り向いたがそこには何もなかった。気のせいだろうか。と、思ったところで、急に茉優の肩が下がった。慌てて茉優を見ると、床に飲み込まれて行ってしまった。
「茉優っ」
慌てて後を追おうとして、結菜が手を伸ばしたが間に合わなかった。茉優を飲み込んだところで、床は元の床に戻ってしまった。何度か床を両手で叩くが、固く、手だけがジンジンと痛んだ。



