「ねぇねぇ、化学の課題、難しくなかった?」
翌日のんびりと一時間目の授業の準備をしていると、茉優が話しかけてきた。茉優も結菜と同じく化学が苦手なようで、化学の課題が出されるたびに、この世の終わりのような顔をする。結菜は茉優ほど化学が苦手ではないが、課題が出された時の茉優の気持ちは思わず共感してしまうこともある。
「しかも、模試の過去問とかも混じってるし、調べないとわからないとか、三善先生って実はスパルタ教師なのかも」
「実際模試も近いから助かるんだけどねぇ」
「それね」
ホームルームの後、クラスはいつもよりも静かだった。一時間目の化学の課題が終わっていない人が多いらしく、おしゃべりしているクラスメイトが少ない。おしゃべりしていたとしても、課題についての話ばかりだ。
チャイムが鳴り、茉優は自席に戻って行った。結菜はペンケースからシャーペンを出そうとした時、三善先生が机の上に置いた紙切れを見つけた。何が書いてあるかも確認するどころか、入れてあったことすら忘れていた。周りに見つからないように、そっと紙を開こうとしたところで、教室の前の扉が開いた。
慌ててペンケースに紙切れを入れ直して、顔を上げると、クラス担任が入ってきていた。三善先生ではないことに、クラスがざわめくが、担任が軽く咳払いすると静かになった。
「三善先生は体調不良ということで本日はお休みになった。よって一時間目は自習とのこと。模試も近いし、しっかり勉強しておけよ」
それだけ言い残すと、担任は教室を出て行った。見張りがいなくなった教室は一気ににぎやかになった。結菜は担任が言った通り模試対策の勉強をすべく、化学の問題集を広げた。
その後の授業は特に自習になることもなく、平穏に一日が過ぎていった。全ての授業が終わり、帰りのホームルームでは担任からは不審者が近辺で出没していることを伝えられた以外に特に話がなかったため、早々に解散となった。
茉優とおしゃべりをしながら昇降口を出ようとしたところで、妙な寒気を感じた。振り返っても、当たりを注意深く見回しても辺りに妖もそれらしいものもいなかった。気のせいだろうか。
「結菜?」
「あ、ごめん」
妖は出る時期も時間も特に決まっているわけじゃない。出ることが増えれば、陰陽師をまとめる術者協会から通達が出るし、人的被害が出れば術者協会から派遣された術者が対応に当たることになっている。
結菜は未成年。それに術者になるつもりもないし、視えるだけで、それ以外の実務的な才能もない。
足を止めている時間が長いからか、茉優が不思議そうに結菜を見る。
そうだ、こういう時、視えない人は。
翌日のんびりと一時間目の授業の準備をしていると、茉優が話しかけてきた。茉優も結菜と同じく化学が苦手なようで、化学の課題が出されるたびに、この世の終わりのような顔をする。結菜は茉優ほど化学が苦手ではないが、課題が出された時の茉優の気持ちは思わず共感してしまうこともある。
「しかも、模試の過去問とかも混じってるし、調べないとわからないとか、三善先生って実はスパルタ教師なのかも」
「実際模試も近いから助かるんだけどねぇ」
「それね」
ホームルームの後、クラスはいつもよりも静かだった。一時間目の化学の課題が終わっていない人が多いらしく、おしゃべりしているクラスメイトが少ない。おしゃべりしていたとしても、課題についての話ばかりだ。
チャイムが鳴り、茉優は自席に戻って行った。結菜はペンケースからシャーペンを出そうとした時、三善先生が机の上に置いた紙切れを見つけた。何が書いてあるかも確認するどころか、入れてあったことすら忘れていた。周りに見つからないように、そっと紙を開こうとしたところで、教室の前の扉が開いた。
慌ててペンケースに紙切れを入れ直して、顔を上げると、クラス担任が入ってきていた。三善先生ではないことに、クラスがざわめくが、担任が軽く咳払いすると静かになった。
「三善先生は体調不良ということで本日はお休みになった。よって一時間目は自習とのこと。模試も近いし、しっかり勉強しておけよ」
それだけ言い残すと、担任は教室を出て行った。見張りがいなくなった教室は一気ににぎやかになった。結菜は担任が言った通り模試対策の勉強をすべく、化学の問題集を広げた。
その後の授業は特に自習になることもなく、平穏に一日が過ぎていった。全ての授業が終わり、帰りのホームルームでは担任からは不審者が近辺で出没していることを伝えられた以外に特に話がなかったため、早々に解散となった。
茉優とおしゃべりをしながら昇降口を出ようとしたところで、妙な寒気を感じた。振り返っても、当たりを注意深く見回しても辺りに妖もそれらしいものもいなかった。気のせいだろうか。
「結菜?」
「あ、ごめん」
妖は出る時期も時間も特に決まっているわけじゃない。出ることが増えれば、陰陽師をまとめる術者協会から通達が出るし、人的被害が出れば術者協会から派遣された術者が対応に当たることになっている。
結菜は未成年。それに術者になるつもりもないし、視えるだけで、それ以外の実務的な才能もない。
足を止めている時間が長いからか、茉優が不思議そうに結菜を見る。
そうだ、こういう時、視えない人は。



