「人が行方不明になる系の」
「行方不明?」
「学校の近くで、うちの生徒が何人かいなくなっているらしいよ。でもね、不思議なことに一日くらいたてば、何事もなかったかのように戻ってくるんだって」
「それただの家出じゃない?」
「それが違うんだって。いなくなっている間の記憶がないみたい」
「え?」
「こわいよねぇ」
怖いと言っている割に、危機感がなさそうなくらい茉優は緩く言った。
結菜たちが通う高校は不審者情報や事故などが近くで発生した時には、翌日のホームルームで担任から共有される。だけど、茉優が話してくれた事件は共有されていない。この学校の生徒が被害に遭っているならば、すぐに警戒するように言われるはずだ。
それが言われない理由は、一体。
結菜が考え込んでいると、予鈴が聞こえてきた。結菜は慌てて残りの焼きそばパンを口に押し込んで、茉優と共に教室に戻った。教室に戻るころには、茉優が話してくれていたことは結菜の頭からすっかり抜け落ちてしまっていた。
日直当番のタスクを終わりにさせて、結菜は日誌を片手に職員室に向かった。日は徐々に暮れ始めている。黄昏時に近くなる前にできれば家に辿り着きたい。足早に職員室に向かうと、三善先生がクラス担任と話をしていた。
話を終えるのを待っていると、三善先生が結菜に気づいて手招きした。
「先生をお待ちのようですよ」
「ああ、すまんな、日下部」
軽く頭を下げて、三善先生はクラス担任と別れた。昼間のことを思い出し、結菜は下を向いたまま三善先生とすれ違った。
担任に日誌を渡すと、すぐに結菜は教室に戻った。部活帰りの同級生たちが教室に残っているだけで、教室は閑散としていた。クラスメイトに別れを告げて、リュックを手に取り教室を出た。
下駄箱でスニーカーに履き替えようとしたところで、化学準備室だけがぼんやりと灯りがついているのが見えた。まだ、三善先生はあの部屋で明日の授業の準備をしているかもしれない。
昼休みに見た三善先生は、本当に三善先生だったのか。
それに、真昼間にもかかわらず出てきた、妖。あっという間に祓った三善先生は一体何者だろうか。
着任挨拶で見てから半年。
これまで見てきた三善先生は本当の姿ではないのかもしれない。
スニーカーに履き替えた結菜は、足早に学校を去っていた。
「行方不明?」
「学校の近くで、うちの生徒が何人かいなくなっているらしいよ。でもね、不思議なことに一日くらいたてば、何事もなかったかのように戻ってくるんだって」
「それただの家出じゃない?」
「それが違うんだって。いなくなっている間の記憶がないみたい」
「え?」
「こわいよねぇ」
怖いと言っている割に、危機感がなさそうなくらい茉優は緩く言った。
結菜たちが通う高校は不審者情報や事故などが近くで発生した時には、翌日のホームルームで担任から共有される。だけど、茉優が話してくれた事件は共有されていない。この学校の生徒が被害に遭っているならば、すぐに警戒するように言われるはずだ。
それが言われない理由は、一体。
結菜が考え込んでいると、予鈴が聞こえてきた。結菜は慌てて残りの焼きそばパンを口に押し込んで、茉優と共に教室に戻った。教室に戻るころには、茉優が話してくれていたことは結菜の頭からすっかり抜け落ちてしまっていた。
日直当番のタスクを終わりにさせて、結菜は日誌を片手に職員室に向かった。日は徐々に暮れ始めている。黄昏時に近くなる前にできれば家に辿り着きたい。足早に職員室に向かうと、三善先生がクラス担任と話をしていた。
話を終えるのを待っていると、三善先生が結菜に気づいて手招きした。
「先生をお待ちのようですよ」
「ああ、すまんな、日下部」
軽く頭を下げて、三善先生はクラス担任と別れた。昼間のことを思い出し、結菜は下を向いたまま三善先生とすれ違った。
担任に日誌を渡すと、すぐに結菜は教室に戻った。部活帰りの同級生たちが教室に残っているだけで、教室は閑散としていた。クラスメイトに別れを告げて、リュックを手に取り教室を出た。
下駄箱でスニーカーに履き替えようとしたところで、化学準備室だけがぼんやりと灯りがついているのが見えた。まだ、三善先生はあの部屋で明日の授業の準備をしているかもしれない。
昼休みに見た三善先生は、本当に三善先生だったのか。
それに、真昼間にもかかわらず出てきた、妖。あっという間に祓った三善先生は一体何者だろうか。
着任挨拶で見てから半年。
これまで見てきた三善先生は本当の姿ではないのかもしれない。
スニーカーに履き替えた結菜は、足早に学校を去っていた。



