「此処にいなさい」君がそう言って去ったのは、いつだったか。

それは僕を守るための言葉で。

同時に、僕を閉じ込める呪文でもあった。

僕はいつまで、此処にいればいいのだろう。

外から漏れ聞こえる声に、無性に焦がれる。

気付けば、(かたく)なな闇を(ひら)くように、僕は閉ざされていた扉を開いていた。