4章:学園内の調査開始
放課後、学園の廊下は静かだったが、その空気の中には何か不穏なものが漂っている。愛海と一緒に歩くはるとは、歩調を合わせながらも何度も振り返る。何か、見られているような気がしてならないのだ。
「まさか、本当にあの言葉が現実のものになるとは思わなかった。」愛海が静かに言う。彼女の表情は真剣で、どこかしらの不安を隠しきれていない。「でも、調べるしかないよね。」
「うん。」はるとは答えるが、心の中で何かが引っかかっていた。赤月先生の言葉に引き寄せられるように、無意識に足が地下へと向かっていた。だが、この先に何が待ち受けているのかを考えると、どうしても足が重く感じられる。
「地下室、行こうか?」愛海の声が、はるとの心の中で引き寄せられるように響く。彼女が何も言わなくても、その眼差しはすべてを物語っていた。もう、後戻りはできない。
「行こう。」はるとの返事は短かったが、その決意は固かった。二人は階段を降り、地下室の扉の前に立つ。扉の前に立つと、異常なほどの静けさが周囲を包んでいる。その沈黙に、二人の胸が高鳴る。
「大丈夫かな…」愛海の声は少し震えていた。
はるとはその声を無視するように、扉を開けた。目の前に広がっていたのは、薄暗い地下室。足元にある埃の積もった床と、壁にかかる古びたランプの光が、どこか忘れられた場所のように感じられた。
「ここ、誰も来たことがない場所だ。」はるとの目が鋭く光る。「でも、何か手がかりがあるはずだ。」
二人は静かに歩を進める。すると、壁の一部に異様な模様が刻まれているのを見つける。まるで、誰かが意図的に描いたかのように。愛海がその模様に手を触れると、突然、床が軋む音が響き、目の前の壁が少しずつ動き始めた。
「これ、何かの仕掛けか?」愛海が驚きの声をあげるが、はるとは冷静にその動きを見守る。
次の瞬間、壁が完全に動き、隠された部屋が現れた。部屋の中には、古びた書類や装置が散乱しており、その中央に小さな箱が置かれている。箱の表面には、「竜の力を引き寄せる者」と刻まれていた。
「これが、あの『竜の力』に関係しているのか…?」はるとは箱を手に取ろうとするが、その瞬間、背後で音がした。
愛海が振り向くと、亜梨沙が立っていた。「あの、私も一緒に調べてもいいかな?」彼女は不安そうな表情を浮かべながらも、その足取りは確かなものだった。
「亜梨沙…」はるとは少し驚きつつも、頷く。「もちろん、君の力も必要だ。」
その言葉に亜梨沙は微笑んだ。しかし、その微笑みにはどこか、過去を背負った者のような影が感じられる。彼女は、自分を犠牲にしてでも他者を助けるタイプだ。その強さが、今回の謎を解く鍵になると確信していた。