3章:屋上での再会
放課後、静かな校舎内に響く足音が一つ、また一つと続く。午後の陽射しが色を失い、薄暗い光が窓から差し込んでいた。はるとは、愛海と共に屋上へ向かっていた。二人の間には、言葉では表現できない不安と期待が入り混じっていた。
「昨日のこと、まだ信じられないね。」
愛海の声は、どこか沈んでいる。はるとはその言葉に応えることなく、歩き続けた。赤月先生が話した「竜の力を引き寄せる者」という言葉が、心の奥底に重くのしかかっていた。何が本当で、何がただの噂なのか、次第にわからなくなってきた。
屋上の扉が開かれると、冷たい風が二人の体を包み込んだ。はるとが目を凝らすと、屋上の中央に立つ人物が見えた。赤月先生だ。
「君たち、来たのか。」
赤月先生の声は、予想通り冷徹で響くが、その眼差しにはどこか寂しさが隠れているようにも感じられる。愛海はその視線に不安を覚えながらも、赤月先生の前に立つ。
「先生、昨日言っていたこと、本当に意味があるんですか?」愛海の声は、少し震えていたが、はるとはその問いに直接答えることはなかった。代わりに、赤月先生が冷ややかに一歩を踏み出す。
「君たちは、まだ分かっていない。だが、すぐにわかるだろう。」
その言葉が、屋上に響く。赤月先生は二人をじっと見つめた後、少し顔を背ける。瞬間、屋上の空気が一変したかのように感じられる。風が急に強くなり、まるで何かが目覚めたような錯覚に囚われた。
愛海が後ろで一歩引くと、はるとが冷静に声をかける。「先生、本当にこれから何が起こるんですか?」
赤月先生はその問いに答えることなく、再び屋上の端に向かって歩き始めた。その姿はまるで、自分の道を既に決めたかのようだった。「それは君たち次第だ。君たちの力を信じている。」
その言葉に、愛海は深く息を呑みながらも、心の中で一つの決意を固める。彼女がこの学園で何かを変えなければならない。何か、大きな秘密が隠されていることに気づいていた。