10章:赤月先生の計画
学園が静まり返る中、はるとたちは亜梨沙の力を守りながらも、赤月先生の意図を掴むための手がかりを探し続けていた。亜梨沙の体調は回復しつつあったが、その力を使うたびに彼女の命が削られていくという事実は、彼女を支える仲間たちにとって重い現実だった。
「赤月先生が求めていたもの、少しずつ見えてきた気がする。」直悠が冷静に言った。彼の目には、何かを確信したような光が宿っている。「あの竜の力は、単なる力ではない。学園を異次元に引き寄せる力だとしたら、赤月先生はその力を解放し、学園を支配することで何かを復活させようとしている。」
「でも、復活させるのは何なんだ?」はるとが問い返す。その心には、赤月先生が狙っていたものが一体何なのか、という疑問が湧き上がっていた。
「それは…『竜』だろう。」亜梨沙が静かに答えると、部屋の空気が一瞬固まった。彼女の言葉に、誰もが驚きと疑念を抱えたまま彼女を見つめた。
「竜…?」愛海がその言葉を繰り返した。「でも、どうしてそんな古代の存在が…」
「赤月先生が求めていたのは、伝説の竜の力を完全に引き出すことだ。『竜』は、学園の力の源であり、異次元の扉を開けるためのカギでもある。」亜梨沙の声には、力強さと同時に、彼女自身が抱える不安も滲んでいた。
「だから、あの力を完全に解放してしまうと、異次元の竜が現れて、学園全体を支配してしまう。赤月先生が言っていた『新しい秩序』というのは、異世界の力を取り込んで、この世界を支配することだったんだ。」亜梨沙は一息ついて、はるとたちに目を向けた。「そのためには、竜の力を完全に制御できる者が必要で、私がその役割を果たさなければならない。」
その言葉に、はるとはしばらく黙っていた。彼女が背負っている重荷を感じると同時に、学園を守るためにはどうしてもその力を使わなければならないという現実を突きつけられていることが、彼の胸に重く響いた。
「でも、亜梨沙、君がその力を使うたびに命が削られるんだろう?」愛海が心配そうに言う。「それじゃ、いつか限界が来る。僕たちにはどうしたらいいんだ?」
「私がその力を使い続ける限り、いつか死んでしまう。それが、私にとっての代償だ。」亜梨沙は静かに言ったが、その目には決意の光が宿っていた。「だけど、今は学園を守ることが最優先だ。私が戦わなければ、赤月先生が学園を完全に支配してしまう。」
「じゃあ、どうする?」はるとが問いかけると、亜梨沙は少し黙り込んだ。
「赤月先生の目的は、学園を異次元に引き寄せ、竜の力を引き出して完全に支配することだ。それを止めるためには、まず赤月先生を完全に封じ込めなければならない。」亜梨沙は強い意志を込めて言った。
その言葉に、はるとは顔を上げ、仲間たちと目を合わせた。彼は確信を持った。「赤月先生がどこにいるか、今すぐにでも探し出して、止めに行くべきだ。亜梨沙が無理をしなくてもいいように、僕たちが力を合わせて、あの男を追い詰めるんだ。」
直悠は冷静に、少しだけ考えた後に口を開いた。「赤月先生の隠れ場所がわかれば、すぐにでも動ける。しかし、彼の動きは予測できない。学園内にあれだけの異次元の力を引き寄せる装置があるなら、それがどこに隠されているのか、慎重に調べる必要がある。」