気がつくと、ひな乃は座敷牢の中で倒れていた。
どうやら気を失ったようだ。

「痛っ……」

動こうとすると背中や腕に痛みが走る。

こんなのは慣れている。
気に入らなければ鞭で打たれるのはいつものことだ。

そう思っていたはずなのに、ひな乃の目には涙が溢れてきた。

もう戻れない。
もう柊様に会うことは叶わない。

一度柊の優しさに触れてしまったひな乃は、以前のように心を無にすることができなかった。

「柊様……」

ひな乃の心は張り裂けそうだった。
お守りのペンダントも奪われてしまった。

もうひな乃には何も残っていない。

「私のことなんて拾わなければ良かったのに」

ヤツガミ様から酷い仕打ちを受けていないだろうか。
争いになっていないだろうか。

寂しさと心配が押し寄せて、涙とともに流れていく。

「どうかご無事で……」

ひな乃に出来るのは、柊の無事を祈ることだけだった。