「えっと、この透明な物は食感がさくさくと軽くて良い、気がします。小豆も甘くて柔らかくて、この白い餅のようなものと良く合ってます……。渋めのお茶と一緒に食べたら、もっとたくさん食べられそう、です……」

ちらりと柊の方を見ると、彼は真剣にひな乃の感想を書き留めている。

「あの……こんな感想でよろしいのですか?」

ひな乃の問いかけに柊が顔を上げた。

その瞬間、ひな乃は時が止まったように思えた。
彼の表情は、とても満ち足りていて美しかったのだ。

「良い感想だ。この透明のものは寒天。餅のようなこれは求肥だ。少し甘めかもしれんな。単品で食べるならもう少し……」

柊はひな乃に説明しながら、また何かを書き始める。

下を向いてくれて良かった。
あのまま見つめられたら、吸い込まれてしまいそうだもの。

ひな乃は胸を撫で下ろし、深呼吸をした。


――柊様は私に対して恐ろしい顔を向けてこない。

誰かと話す時、睨まれたり顔をしかめられたりするのが当たり前だったひな乃。

柊が優しい表情や満足そうな顔をするのが、とても新鮮に感じられた。


「次、こちらの芋ようかんも頼む」
「は、はい」

結局ひな乃は甘味を食べさせられ、感想を求められただけだった。

これは本当に仕事なのだろうか。

ひな乃には理解できなかったが、柊は大変満足そうだった。

「明日も頼めるか?」
「私で良ければ……」

そう言った柊の表情は期待に満ちており、当然ひな乃は了承した。



ひな乃にとって、柊は掴みどころのない不思議な人物だった。


温かい食事をくれて、甘味まで食べさせてくれる。
柔らかなお布団で寝かせてくれて、簡単な仕事を言いつけるだけ。

柊様は呪いだと言っていたけれど、こんな幸せな呪いがどこにあるというの?

ひな乃は首を傾げるばかりだった。