馴れ初めもないまま、私は今日、どんな方なのかも知らない人のところへ行く。
相手は立派な軍人様。両親が決めた結婚相手に興味など沸くわけもなく、幾度か聞いた名前も覚えていない。
でも、それでいい。
私はお父様とお母様が幸せに思って祝福してくれるのであればそれでいい。

だって私は、前世で大罪を犯したのだから。
大勢の人間を殺し、人間の手によって葬られた最悪の鬼だったのだから。

だから、今世の人生はどんな人生でもいい。虐げられたって、罵られたって、罵倒されたって。
どんな酷い人生でも覚悟をしている。

だから、今日から旦那様になるお方がどれだけ冷酷だろうと、無慈悲だろうと、私はそれを自分の運命として受け入れる。

前世にした過ちをそれで償えるのであれば、どんな人生がこれから待ち受けていようと受け入れる。

そう、思っていたのに。