「彼らを導くのは私ではありません。すくよ、あなたです。極めて重要な使命を持って生まれてくる妹や弟たちを正しい方向に導くのはあなたなのです。そのために46億年の記憶を与えました。生命が誕生するための長い旅路を教えました。人類が犯した多くの過ちを教えました。その過ちの中でも政治や宗教の問題は深刻です。優れた政治家や宗教家は数多くいますが、残念ながら、そうではない人たちも多く存在しています。そして、その人たちが間違いを犯し続けているのです。本来、政治や宗教は人類の平和と繁栄のために存在するはずですが、残念ながらそうはなっていません。政治は、時として独善や長期政権によって独裁を生み、人々を苦しめるだけでなく、戦争を引き起こします。宗教は、異なる宗派、異なる宗教を非難し、排除し、対立と抗争を生んでいます。各地で戦争を引き起こしています。政治や宗教で人々を導くには限界があるのです。何故なら、そこには覇権(はけん)や損得を餌とする魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)しているからです。すくよ、あなたは政治や宗教の力を借りてはいけません。偏った考えを排除しなければなりません。公平で公正な立場を堅持しなければならないからです。すくよ、惑わされてはいけません。目に見えることだけに影響を受けてはいけません。声の大きな者たちの影響を受けてはいけません。すくよ、あなたに『いつどんなときにも変わることのない正しい物事の道筋』を与えます。あなたの判断と行動はこれに基づかなければなりません。そして、それに基づいて妹や弟たちを導くのです。わかりましたね、すくよ」

 特別な手に優しく抱き締められた。
 そして、自らの名を告げられた。
『永遠不変の真理』という御名前だった。
 その声が諭すような口調に変わった。

「すくよ、この世から46億年の記憶を消し去ってはなりません。(しゅ)を消し去ってはなりません。邪悪と傲慢(ごうまん)から守り抜くのです。そして、終末時計の針を元に戻すのです。すくよ、あなたに真理と正義と勇気と希望を与えます。それを持って妹や弟たちを、そして人類を導きなさい。あなたが地球の光輝く未来を導くのです」

 そこで声が消えた。
 手が離れた。
 存在が消えると心が開かれ、自らの特別な使命をはっきりと認識した。

 与えられた名前を呟いた。
 
 すくよ。
 
 わたしの名前は、すくよ。
 
 地球とすべての命を救うために生まれてきた女の子、
 
 (あるじ)救世(すくよ)
 
 完