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ハルカゼスターの社長和田橋、賭博や薬物に関わった現アーティスト、元アーティストが一斉に検挙された。そして、田所ミチは細田朱莉の殺人を認めてその他の余罪も調べている。
「結局、花田瑠衣歌は顔出しのライブ配信しなかったな」
「世間を煽るだけ煽って出てこなかったっすね、あの氷のレコードだって本当はいつ録音されたものなのかも分からないし、そもそもヒルイって本当に生きてるんすかね」
「さあな、今度真中理音を任意で引っ張れば真実も見えてくるさ」
日菜は大宮と浦井のやりとりを遠巻きで眺める。
大宮はそんな日菜を視界に入れて荒く足音を立てながら近づいてきた。
「なあに、自分関係ないですよみたいな顔してんだ」
「だって、私勝手ことしちゃったし、田所ミチが関係してるとなればこの件から外されること間違いないですし…」
「田所ミチはお前じゃないと捕まえられなかった」
「大宮さん…」
「なんていうと思ったかドアホめ、お前のいう通り田所ミチの件はお前は今後一切関わることはない」
日菜は唇を噛み締める。みっともなく泣きそうになり、口をへの字に曲げて大宮を見上げた。
大宮はそんな日菜をみて呆れたように笑う。
「勘違いするな、お前はお前のやるべきことを全力でやれってこと。この世はお前が思ってるよりもっともっと闇深い事件で溢れてんだよ、これからも馬車馬のように働け若月」
そう言って日菜の肩を軽く叩いた大宮。そして大宮の後ろから浦井が顔を覗かせた。
「あの九条さんって人は、その後どうなったんです?」
「ああ、九条さんはある程度話きいて帰ってもらった。田所ミチも病院に仕掛けた爆弾の件を認めてるしな。表彰もんだよ、あの人」
大宮がそう答える。日菜はあれ以降大宮にとめられているのもあり九条とは顔を合わせていなかった。
九条は日菜に言ったとおり間に合わせ、日菜の親友と生まれてくる命を救った。
爆弾をとめたということは、もっとたくさんの命を救っているということだ。
まだ、お礼も言えていない。九条がいなければおそらく自分はここにはいないだろうと日菜は思った。
「若月」
「はい」
「くれぐれもお礼言っとけよ、九条さんに」
「会いにいっていいんですか」
日菜の言葉に、浦井が茶化すように口笛を鳴らす。
浮ついた気持ちで言ったつもりはなかったが妙に顔に熱がたまった。
「ま、ひとまず田所ミチの件は終わった。さっさとデートでもなんでも行ってこい」
「なっ、そんなつもりじゃないです!今回本当にたくさん協力してもらったから!」
日菜の空回る焦りをみて、ケラケラとか笑っている大宮と浦井。日菜はデスクから鞄を引っ掴み揶揄う2人を睨みながらその場を出て行こうとするがふと足を止めた。
「大宮さん」
「なんだよ」
「あの時、ミチのところに行かせてくれてありがとうございました」
「行かせてくれてっていうより、お前が勝手に突っ走ったんだろ」
「でも」
本気で引き止めることもできたはずだった。あそこで追いかけなかったのは大宮の優しさや覚悟なのだと日菜は思う。
日菜は再度お礼を言おうとしたが、大宮は早く行けと言うように片手を上下に振った。



