――生まれ変わりって、信じる?
 俺、神様やめるわ。緋兎美と一緒になる。
 土地神なんかいなくてもお前らがいれば平気だろ? それより俺は恋を選ぶ。悪いか?

「学校に遅れる。起きろ」

 不機嫌そうな優牙に夢の余韻を断ち切られ、白狼が頬を膨らませる。

「んだよ。うさぎをとられて拗ねてるのか?」
「お前じゃあるまいし」

 ぼそりと横から呟くのは黒狼。かつてあかうさぎになるはずだった乙女を横からかっさらった元人間の黒狼忌神。

「で、お前なんでいるんだ?」

 ここは三上邸にある白狼の部屋だ。居候している優牙が起こしに来たのは理解できるが、旧家を毛嫌いしていた黒狼までいるのはこれいかに。

「ヒトミの部屋にいても良かったのか?」
「殺す」

 そういえば彼は何度も瞳に接触しているのだ。バスのなかで手のひらに口づけたのが枷の代わりになっていたから手出しはできなかったようだが、それでも同じ部屋で一晩話をしていたなどと暴露されると殺意が湧く。

「物騒な奴だな。オレは卯月ひとすじなの」
「生まれ変わりでも?」
「ああ」

 なぁ優牙、と話をふられて優牙も微笑う。

「そうだな……我にとっての愛いうさぎは、卯の花だけだ」