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「旧家もずいぶんと弱体化したものだな」
「仕方ねぇだろ。狼神が姿を消してずいぶん経つんだ。蒼谷が衰退するように、旧家も消えていく運命だと俺は思っていたよ」

 白狼に促され、三上家の応接間でふかふかのソファーにまるで狼というより犬のように寝そべりながら優牙は詰問する。

「蒼谷にいる八綾家は」
「俺んとこのミカミ、あとは迷信深いイスルギと現実主義者(リアリスト)のフカモリだ」

 姓をあげると優牙はふん、と鼻を鳴らす。

水の身神(イノンノイタックル)紫の石動(イコロスオプ)緑の深森(キムンヌサ)か」
「いまは三上って名乗っている。橙のミキを併合したから」
「残る四つは?」
「ツキリノは逃げたらしい。あとのは跡継ぎがいないとかでくたばっちまった」
黄の月離野(チュプ・アヌンコタン)の件なら親父殿からうかがっている。彼らが所持していた土地も引き取ったということになるのだな」
「まあな。おかげでいまじゃ大地主だ」

 白狼がうそぶくのを横目に、優牙は呟く。

「……じゃああれは、気のせいだったのだろうか」
「ん?」
(あか)の、色濃い気配を感じたのだが」

 弱々しく呟く優牙に、白狼はギクっと身体を震わせるも、慌てて首を傾げる。

「緋? 分家の人間じゃないか」

 緋の鳥居家は十五年前に最後のひとりが死に絶えて以来、消滅したことになっている。分家として赤堀や秋津などいくつか残っているとはいえ、神術を操るほどのちからを持つ人間はもはやいないだろう。うさぎを除いて。

「そうかもしれん」

 だが、と心のなかで優牙はひそやかに想う。

 ――恋しいというよりも、懐かしく感じたのはなぜなのだろう。