* * *
「旧家もずいぶんと弱体化したものだな」
「仕方ねぇだろ。狼神が姿を消してずいぶん経つんだ。蒼谷が衰退するように、旧家も消えていく運命だと俺は思っていたよ」
白狼に促され、三上家の応接間でふかふかのソファーにまるで狼というより犬のように寝そべりながら優牙は詰問する。
「蒼谷にいる八綾家は」
「俺んとこのミカミ、あとは迷信深いイスルギと現実主義者のフカモリだ」
姓をあげると優牙はふん、と鼻を鳴らす。
「水の身神に紫の石動、緑の深森か」
「いまは三上って名乗っている。橙のミキを併合したから」
「残る四つは?」
「ツキリノは逃げたらしい。あとのは跡継ぎがいないとかでくたばっちまった」
「黄の月離野の件なら親父殿からうかがっている。彼らが所持していた土地も引き取ったということになるのだな」
「まあな。おかげでいまじゃ大地主だ」
白狼がうそぶくのを横目に、優牙は呟く。
「……じゃああれは、気のせいだったのだろうか」
「ん?」
「緋の、色濃い気配を感じたのだが」
弱々しく呟く優牙に、白狼はギクっと身体を震わせるも、慌てて首を傾げる。
「緋? 分家の人間じゃないか」
緋の鳥居家は十五年前に最後のひとりが死に絶えて以来、消滅したことになっている。分家として赤堀や秋津などいくつか残っているとはいえ、神術を操るほどのちからを持つ人間はもはやいないだろう。うさぎを除いて。
「そうかもしれん」
だが、と心のなかで優牙はひそやかに想う。
――恋しいというよりも、懐かしく感じたのはなぜなのだろう。
「旧家もずいぶんと弱体化したものだな」
「仕方ねぇだろ。狼神が姿を消してずいぶん経つんだ。蒼谷が衰退するように、旧家も消えていく運命だと俺は思っていたよ」
白狼に促され、三上家の応接間でふかふかのソファーにまるで狼というより犬のように寝そべりながら優牙は詰問する。
「蒼谷にいる八綾家は」
「俺んとこのミカミ、あとは迷信深いイスルギと現実主義者のフカモリだ」
姓をあげると優牙はふん、と鼻を鳴らす。
「水の身神に紫の石動、緑の深森か」
「いまは三上って名乗っている。橙のミキを併合したから」
「残る四つは?」
「ツキリノは逃げたらしい。あとのは跡継ぎがいないとかでくたばっちまった」
「黄の月離野の件なら親父殿からうかがっている。彼らが所持していた土地も引き取ったということになるのだな」
「まあな。おかげでいまじゃ大地主だ」
白狼がうそぶくのを横目に、優牙は呟く。
「……じゃああれは、気のせいだったのだろうか」
「ん?」
「緋の、色濃い気配を感じたのだが」
弱々しく呟く優牙に、白狼はギクっと身体を震わせるも、慌てて首を傾げる。
「緋? 分家の人間じゃないか」
緋の鳥居家は十五年前に最後のひとりが死に絶えて以来、消滅したことになっている。分家として赤堀や秋津などいくつか残っているとはいえ、神術を操るほどのちからを持つ人間はもはやいないだろう。うさぎを除いて。
「そうかもしれん」
だが、と心のなかで優牙はひそやかに想う。
――恋しいというよりも、懐かしく感じたのはなぜなのだろう。