真鍋(まなべ)美操(みさお)。二十九歳。私は普通だ。
「え、なんで別れる……の?」
目の前にいる半裸の彼氏を前にして私は呆然とした。さっきまで私とベッドで寝ていたはずなのに、なんか私じゃない名前を出してきたから、誰それー?って比較的穏やかにヘラっと訊いた。すると彼の方から言い訳してきたのだった。
「だからさぁ、お前と一緒にいると俺が駄目になるっていうかさぁ。だってほら、また浮気しちゃったし、それなのにお前は許してくれるじゃん」
「うん。別に浮気なんて人間なんだから仕方ないじゃん?私はそれでもいいって言ってるでしょ」
私は、普通だ。たとえ五回目の浮気だとしても許せる女だ。
「そんなん、普通じゃねーよ」
彼はワンルームの家から出ていった。現在二十一時。
「まだスーパー開いてるかなー……」
虚脱感を抱えながら、ゆるふわの巻き髪を雑にひとまとめし、押入れの奥につっこんでいたスウェットを着て、薄化粧を落として外に出た。