広い庭は綺麗な草花が広がり、大きな木は静かに木陰を作っている。
キッチン側が洋風の庭、和風の建物側には松など和風の庭になっていた。
朝は肌寒かったがこの時間になれば心地良い。
外であるから当然だが風が通り、広い庭でこのような食事していることが陽子には不思議だった。
時間がゆっくりと過ぎていくようで、こんな贅沢をしたのはいつぶりだろうか。
ずっと慌ただしいような、でも休みは家にいて気がつけば夕方という暮らし。
こういう生活を送れば和代のように笑う、少しは幸せな気持ちでいられるのだろうかと、陽子はぼんやりと思っていた。
「お口に合う?」
「美味しすぎます」
「嬉しいわ」
和代は微笑みながら陽子のティーカップに紅茶を注ぐ。
陽子はお礼を言いながらまた飲んでいるが、その顔は和代が最初に見たときより遙かに穏やかに見えた。
自分を助けてくれた女性は、とても疲れ切っているように和代には見えた。
疲れているはずなのに人を助けようとした陽子を、和代は見て見ぬふりなど出来なかった。
優しい彼女に何か出来ないだろうか、そう思って少々強引に食事に誘ったが美味しそうに食べている姿を見て安堵した。