「今日の紅茶はダージリンをセレクトしました。
フレンチトーストが甘めだから。
このティーカップとソーサーは『ノリタケ』の『ヨシノ』。
ヨシノの桜をイメージしてるんですって。
フレンチトースト用には、メープルシロップ、はちみつの二種類があるから好きに使ってね。
王道はメープルシロップなんでしょうけど、切らしたときにはちみつを使ってからこちらも捨てがたくて」
英語の書かれたガラス瓶にはメープルシロップ、プラスチック製容器にははちみつが入っていて、陽子は目の前に置かれた豪華な食事に目を白黒させた。
ティーカップも上品で、陽子は自分のバレッタの色とソーサーに縁取られたピンク色が似ていることに気づいた。
和代なりの気遣いだが、陽子もそれに気づいてなんとなく気恥ずかしくなった。
「簡単なものだけれど。さぁいただきましょう」
「はい、いただきます」
にこにこと手を合わせた和代につられ、陽子も手を合わせる。
陽子はメープルシロップかはちみつか悩んだが、一枚目をはちみつで試すことにした。
ナイフとフォークで切って一口フレンチトーストを口に含めば、じゅわっと味がしみ出して濃厚なはちみつととても合う。
紅茶を飲めば、さっぱりとした味と香りで紅茶がもう一口食べてみてはと勧めてくれるようだ。
カリカリのベーコンも、甘さに慣れた口直しに最高だ。
陽子は行ったことは無いがイギリスだとこういう感じの食事だろうかと勝手に想像してしまう。