和代は足の痛みはもう引いたと、ランチ作りを始めた。
陽子も何か手伝いますと言ったが、このコンロ、私以外には火を使わせないのよと笑う和代に従うことにした。
和代は使い込んだ鉄のフライパンを温めてからバターを落とし、卵液に浸したフランスパンを切った物を置いていく。
バターの良い香りがキッチンに広がり、ティーカップを用意していた陽子は思わずくんくんと嗅いでしまう。
再度お腹がくぅくぅと返事をするように小さく鳴くので陽子は苦笑いするしか無い。
しばらくして和代はフライパンから皿に移す。
香ばしく焼き上がったフレンチトーストは、こんがりときつね色だ。
「天気も良いしお庭でいただきましょうか。
運ぶのはお願いして良いかしら」
「もちろんです!」
ダイニングからは庭に降りられ、そこには大きなパラソル、その下にアンティークなデザインのブロンズ色のテーブルセットがあった。
丸テーブルに二人分の食事を運び、陽子は言われるままに陶器のポットとティーカップセットを二つテーブルに置けば、思ったよりもテーブルに広さがあったので余裕で置くことが出来た。
真っ白な楕円形の皿の上には、フランスパンで作ったフレンチトーストが二枚、横にはサラダ、カリカリのベーコン。
ソーサーは緑の柄に広くピンク色が円で彩られていて、ティーカップの内側には桜などの花柄が描かれている。
時間を見計らって、和代は静かにポットから紅茶を注いだ。
薄いオレンジ色の紅茶にカップの花柄が浮かぶようだ。