「長いスカートはだめね、ズボンにしておけば良かったわ」
「本当に大丈夫ですか?
膝や大腿骨とか、ちょっとしたことで痛めたりしますし」

陽子は先日老人が家の中でよく転倒し、大腿骨を骨折して寝たきりなりやすいというニュースを見たばかりだった。
余計に心配になっている陽子に、本当に大丈夫と女性は片足で立ってみた。
無茶をする女性に焦った陽子は、支えて良いのかわからず手を中にさまよわせている。

「本当にありがとう、お嬢さん」
「いえ。大丈夫なら良かったです。
こちらこそ勝手に家に入ってしまいすみま」

盛大に陽子の腹から音が鳴り、恥ずかしさで顔が赤くなった。
ここまでお腹が普通は鳴らないのにと必死に陽子はお腹をさする。

「お嬢さん、お時間があれば一緒に軽食はいかが?
 朝に作ろうと思っていたフレンチトーストと簡単なサラダくらいしかないのだけれど」
「いえいえ!そういうつもりでは」

こんなお屋敷でフレンチトーストなんて最高だが、見ず知らずの家で食事をするのはどうなのだろうかと陽子は断った。

「あ、やっぱり足が痛いかも」

女性が眉間に皺を寄せて足首に視線を落とすと、心配になった陽子は結局家の中まで女性の手を引いて入ることになった。