「あっという間でしたね」
「本当に」

作って準備したのはそれなりの時間を要したのに、彼らがここにいたのは十分ほど。
バタバタしていたので陽子にはもっと短かったように思えた。

「でも楽しかったです」
「でしょう?
それにしても、子供達にはこの格好が受けたみたいね。
あれだけ嬉しそうにしていたのは初めてよ。
陽子さん色々としてくれてありがとう」
「そんな。
彼らの一番は和代さんのお菓子でしょうから」
「それは嬉しいけれど、魔女さんが魔女と呼ばれるほどに似合っていたのでしょうし、陽子さんの演出も良かったからだわ。
どうしましょう、来年からこのスタイルで行こうかしら」
「是非!」
「そうすると、陽子さんもいていただけると助かるのだけど」

にっこりと和代が笑い、陽子は和代から視線を逸らしてしまった。
陽子にとってこの洋館と和代との生活はとても居心地の良いものだ。
だが長居するわけにもと悩んでいたことを、和代は気づいていた。

「もちろん無理にじゃないわ。
せっかくのご縁ですもの、もしここを出て行ったとしても来年のハロウィーンには遊びに来てくれると嬉しいわ。
でももっと嬉しいのはまだ一緒に住んでくれることかしら」

陽子は和代の言葉に俯いた。
今までならきっといつもの言葉を言っていただろう。
だが、一緒に住んで素直な気持ちを言う大切さを、幸せであるためには自分からその幸せを掴みにいかなければならないのだと知った。