手持ちが出来る籐のかごには、ビニールの袋とリボンでラッピングされたクッキーがあふれんばかりに入っている。
別の小さな籠にはアレルギーで食べられない子用に、専門店で買ってきたクッキーがある。
これは参加する親から直々に渡され頼まれているものだ。
他の子供達と同じような経験をさせたい、だがアレルギーがあるのでこちらをお願いできないかと親が自分で買ってきて和代に託した物だった。
和代は数年前からその願いを受け入れていて、その子には目印に大きな花のバッジを胸につけている。
陽子は聞いたとき素晴らしいことだと思いつつも、なんて可哀想な子なのだろう、親御さんも大変だろうにと思ってしまった。
だが和代は、
『同情して一緒に悲しんでも、相手はやはり自分は、自分たちは可哀想なのだとより思ってしまうではないかしら。
下手をするとその可哀想という世界にとらわれてしまいかねないわ。
それよりも私達は一緒に楽しむことをしたほうがいいと思うのよね。
それくらいしか私には出来ないし、それで良いのでは無いかしら』
優しげに微笑めば、目尻に皺が寄る。
その瞳には少しの寂しさが混じっているように、陽子は感じた気がした。