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キンモクセイの良い香りを漂わせていた庭の木の下には、散ってしまったオレンジの小さな花びらが広がっている。
玄関には大きなカボチャのランタン。
さすがにプラスチックのものだが、何故か代わる代わる和代の知り合いがやってきては飾り付けていく。
今年のハロウィーン当日は平日だが、その前の日曜日に自治会で行われる子供達のハロウィーンイベントが行われるのだ。

家の前に自治会から渡されたお菓子を渡しますという看板を飾り、その看板を目当てに子供達がくるという仕組みだ。
時間も渡す家の負担を考え、午前十時からの一時間のみ。
和代の家はずっと子供の受け入れをしていて、子供達はいかにもな洋館がハロウィーンの飾り付けをされその屋敷の主人である魔女からもらえる、とびきり美味しい手作りのお菓子を楽しみにしていた。

そんな訳で土曜日からその為のクッキーを作るのだが、今回は陽子も手伝うことにした。
下北沢駅近くの古着屋で買った千円の薄い柄のセーターの袖を腕まくりする。
動きやすいようにジーンズを穿き、髪は紫色のベロア素材のヘアバンドでおさえている。

和代からすれば子供達の親も子供のようなものだ。
付添の親達にもお菓子を渡していたら、多くが親子連れになってしまった。
だけど和代はそれが嬉しく、嫌だなどと思ってはいない。
親達ももらうだけではなく、きちんとしたお礼を心がけているのでお互いに気持ちよくやれているというのは大きい。