和代も今までの人生支える側で生きてきた。
時代もあって目立つのは医者である夫。
三歩下がった妻は夫にとって素晴らしいのであって、妻が褒められるわけでは無い。
和代の夫はそういうことを押しつける人間では無かったが、外との関係がある以上は慎ましい妻として夫を立てる女であろうとした。
あくまで夫を愛していたからこそ出来たと和代は思っている。
そういう夫を見るのは時に眩しく、寂しくもあったことは否定しない。

「陽子さんはそういう強いエネルギーを外に出したい人達の中で、必要な存在。
そこをやりがいと思えるのは凄いことなの。
だってそこから幸せを陽子さんは感じ取るのだから」

和代が笑顔できっぱりと言い切る。
そう言われるだけで、陽子は自分のしている仕事が誇らしく感じてしまう。

あれだけ以前は何でも卑屈に考えてしまうことがあったのに、和代が褒めてくれることを今は受け止められるようになってきた。
流石に最初の頃は、長年ひねくれてしまった心では褒められても受け止めることは出来なかったのだが。

「和代さん、いつもありがとうございます」
「私からすれば知らない世界を教えてもらえてお酒が進んで仕方ないのだけれど」
「もう一合飲んだんですか?!」
「良いお酒が入ったの。
良いお酒と素敵な会話、食事もお酒も進まないわけが無いわ」
「こういう時、とても悪い顔になる和代さんがわりと好きです」
「ふふ、ありがとう」

二人で笑い、広い家は暖かな色に包まれていた。