今日の食事担当は和代。
鯖の味噌煮、きのこが一杯の味噌汁、酢の物、十六穀米のご飯というメニュー。
ショウガのきいた鯖の味噌煮を食べれば、甘辛さと柔らかな身がご飯を進ませる。
平日夜は陽子が遅いため、土日に予定が合えば二人で食事をする。
和代は日本酒を飲みながら、陽子の話を聞いていた。
ちなみに陽子は下戸、和代は酒好き。
酒は百薬の長だと和代は今も晩酌を欠かさない。

「自分の正義を誰かに気にせず真っ直ぐ言えるのは若い子の特権みたいなところがあるけれど、その子は言われた指示をやってからそういう意見を言っているの?」
「いえ、やってないんです。
やる前に指示が気に入らなくて直談判されました」
「ではその子はきっと想像力が豊かなのね」
「想像力ですか?」
「そう。
だけれどその子が精一杯想像しているのだとしても、若さからして培ってきた想像力には限界があるでしょう。
でも彼女の人生ではそれが全てなのだから、なにも悪いことじゃないわ。
その中で彼女は納得できない想像をしたのでしょう。
やる前から好き嫌いせずにまずは試してみる方がきっと良いのに怖いのね。
もしかしたら嫌だと思うかもしれないけれど、そこから楽しみを見いだせるのかが、その後成長できるかどうかに影響すると思うのだけど」
「そういう意味での想像力ですか。
そう言われると私の想像力だって偏ってるって思います。
この歳になってもどれだけ成長したかわからないですし。
だとすると仕方が無いとも思えてきますね。
あぁ、和代さん語録が今日もしみます。
本にして出して欲しい。配りたい会社で」
「私はただ年の功ってのと、それこそ本からの受け売りなんだけれど」