陽子は大学卒業後に運良く正社員になれたのだが、使い潰してもいいという厳しい労働環境ではあった。
簡単に辞めるわけにもいかず歯を食いしばって六年、会社が3代目になった途端傾きだしたので転職を決意した。
今の会社は三社目。
四十前に転職に成功できたものの、二社目より基本給は下がった。
基本給が下がることは承知の上で、休みがきちんと取れるし年間休日数が多いことを優先した。
前職が見事なブラック企業で、とうとう身体を壊したからだ。
初めてのアパレル業界に再就職したものの、どんどん入る若い子の感覚についていけないことも多々。
今回の問題はまだまだ新入社員という女子社員が、指導担当者の指示に納得いかない、自分がやりたかったことではない、と不満をぶちまけるものだった。
「まだ入って約四ヶ月ですよ?
大学卒業して会社勤めも初めてなのに、自分ならこうするとか勝手をするので指導担当者にも泣きつかれていて。
何か注意すると若い子はすぐ辞めてしまうので、指摘することも難しいんですよ。
もちろん注意の仕方、場所など気を遣っても苛められたと泣かれるし。
そんな強気な態度と弱さは、私の時代には考えられないといつも思っちゃって。
権利を言うのは当然だとに言えるようにもなって、羨ましい時代になりました。
権利など言えなかった私達の屍の上に出来た道で、若い子達がランバダ踊りまくってるのを眺めている気分ですよ」