葬式、色々な手続き、和代は必死に駆けずり回った。
どん底に突き落とされた気がした。
一段落して、初めて夫のあとを追いたいと思った。
これからは独りぼっち。
とてもとても、和代は生きていくことが怖くなった。
それだけ、夫を愛していたことを痛感した。
ある日、ふと夫がよく読んでいた本を思い出し、その本を夫がいつも座っていた椅子に座り読み始めた。
そして一つのところでめくる指を止める。
『死者は生きようとしている。
あなたがたの心の内に生きようとしている。
死者が欲したものをあなたがたの生命が豊かに発展させることを、死者は望んでいる。
かくして墓はわたしたちを生命に送り返すのだ』
頬には涙が伝っていた。
気がつけば、初めて自分が泣いていることに和代は気がついた。
『私が生きて、彼の出来なかったことをしよう。
私が笑顔で長生きすることを、夫なら望むはず』
そこから和代はもう一つの人生を歩む決意をした。
愛する夫を胸に抱きながら。