「家事や掃除などはせめて私にさせて下さい」
「一人でいたときはどうしていたの?
毎日朝晩は料理をしていたの?」
「いえ、お恥ずかしいのですがほぼ外食かお弁当などを買ってきてました。
掃除も週末にやれば良い方で」
「掃除は業者さんが来てくれるから、自分の所だけしてくれればいいわ。
お風呂とかトイレとかはやれるときで良いから。
陽子さんには陽子さんの好みやペースがあるのはわかっているわ。
でもね、幸せでいるために食事って大切だと思うのよ。
せっかく家で暇をしていて料理が好きな私と、仕事をして疲れている貴女がいる。
なら、私は陽子さんに美味しい食事を食べさせたいの。
もちろん陽子さんにも食べたくない時や仕事などの付き合いもあるでしょう。
それは当然だし、私も面倒になるときはあるからお互い無理なく。
いかが?」
「私にありがたい話ばかりなのですが。
ただでさえ以前住んでた家賃と同額を払うだけで水道光熱費は無しにしてもらっているのにそれはあまりにもおかしいことです。
せめて食費くらい負担させて下さい」
「そうねぇ、でもキャベツ半分より一個の方がおとくなの。
時々豪華にしたいときとかにお願いできる?」
「ですからそれではなし崩しになってしまいます。
ここはきっちりとした方が良いのでは無いでしょうか」
「しっかりしてるのねぇ」
「和代さん、笑顔で私を甘やかすようなことばかり言うので流されそうになるんですよ」
「ごめんなさいね、娘がいたらこんな感じかしらと思ってしまって。
子供がいない私に、子供を甘やかすというような経験をこの老い先短い私にさせてはもらえないかしら」
陽子はそう言われて返す言葉が浮かばなかった。
結局丸め込まれてしまったが、陽子にはありがたいことばかり。
何かで恩返ししようと心に誓った。