下北沢は若者とクリエーターが集まる街。
演劇専用の劇場、古着屋、オリジナリティーあふれる雑貨店が並ぶ。
路地裏にも隠れ家のように店があり、原宿とは違う服装で歩く人達はなんとなく楽しげだ。
交通の便も良く街も面白い。
そんな下北沢駅周辺から少し歩けば、閑静な高級住宅街が残っている。
そんな場所を日曜の昼前、三田陽子は一人足取りも重く歩いていた。
長袖シャツに薄手のジャンパー、ロングスカートの甘辛ミックスコーデ。
肩下まである髪は少しだけ後ろでまとめ、お気に入りの雑貨店で買った落ち着いたピンク色のバレッタで留めてある。
陽子の歳ともなると着る洋服が難しくなっていく。
四十六という年齢は気がつくと体型や顔も少しずつ変わっていて、昨年着ていた服を今期も着て良いのか戸惑う。
今日の服装はシンプルなデザインで落ち着いた色だが、まだ春が名残惜しくてせめてピンク色をとバレッタで取り入れた。