・【14 事件7.犬の散歩・事件編】


 いつも通り、教室で自主勉をしていると、視界に揺れるようなモノが突然現れて、黒スライムかと思ったら、伊織さんだった。
「益岡くん、あと佐藤さんにも言ってほしいんだけども、ちょっと悩み事があって」
 と言ったところで、佐藤さんが気付いたみたいで、こっちへ駆け寄ってきて、伊織さんを後ろから抱き締めながら佐藤さんがこう言った。
「めっちゃ伊織やわらかいし! 超巨乳だし!」
「そ! そんな話はどうでもいいとして! 悩み事というか事件というか! どうにかしてほしいことがあるんです!」
 と少しヒステリックに甲高い声を上げた伊織さん。
 いやもう、
「ここは真面目に話を聞こうよ」
「知ってるし!」
 本当かよと思いつつ、俺は伊織さんが喋ることを頷きで促すと、
「実は犬の散歩をしているおじいさんから、犬を踏んだとかなんとか言われまして。私は気付かなかったんですが、踏んだ踏んだと言われて、二週間の猶予やるからお金を持ってこいと言われて……」
 何だか泣きだしそうな声になったので、どうしたのかと思っていると、伊織さんは声を震わせながら、
「その時に、得意の巨乳でパパ活すればいいとか言われて、何でそんなことを言われないといけないのかな、って思って……」
 佐藤さんは即座に、
「ゴメン! そんなこと言われてるなんて知らず!」
 と手を合わせて頭を下げて、伊織さんは優しく首を横に振って、
「それは別にいいんです。でもそんなおじいさんからそんなこと言われたことも悲しくて、そもそも踏んでいない、と、思うんですけども……」
 犬を踏んだ感覚か、犬の足を踏んだとかそういうことなのかな、なんとなく見れば分かりそうだけども、感覚も違うような気がするし。
 でもどこか伊織さんは自信が無さげで、ハッキリ踏んでいないのなら踏んでいないと言えばいいのに、とは思った。
 でもおじいさんの圧もあるだろうし、まずはそのおじいさんを目視して、どんなおじいさんか確認することだな、と思って、俺は伊織さんからおじいさんの特徴やその時出会った散歩ルートなどを聞いて、その時は終わりになった。
 授業&授業で放課後、早速伊織さんがそのおじいさんと出会った散歩ルートへ佐藤さんと共に行ってみることにした。
 この辺は住宅街で、塀が高く、曲がり角が見えづらい場所だった。
 坂をのぼった先にいつもの海浜公園があるといったところだろうか。もうちょっと、並木道が続くかな? まあそんなところだ。
 あんまりこの辺は道幅も狭くて、散歩に適している感じもしないけども、この辺に住んでいるということなんだろうか。
 住宅街の、坂の下に住んでいて、坂をのぼって公園を散歩して帰るみたいなコースなのかもしれない。
 そんなことを佐藤さんと会話しながら、そのおじいさんを待っているわけだけども、一向に現れない。
 今日は日中でもまだ涼しいし、いい感じに曇っているから散歩日和だと思うんだけども。
 伊織さんは晴れの日に出会ったらしいし。
「今日来なくね? というかルートが違うんじゃね?」
「散歩のコースって毎回変えたりする?」
「あーしが昔イヌ飼ってた時は変えなかったけど」
「そうだよね、イヌの気持ちも考えたら、同じルートを歩きそうだけども」
「明日はちょっと範囲広げて、二手に分かれてみる?」
「そうしたほうが良さそうだね」
 結局今日はあんまり手掛かりも無く、その日は別れた。
 次の日、一応昨日のことは伊織さんに報告して、あとはそれぞれの活動……といっても、俺は自主勉して、佐藤さんは他の友達と一緒にウェイウェイやってるだけだけども。
 昼休みは佐藤さんが俺のほうへきて、普通に面白い動画の話をし始めた。本当に。普通の友達みたいに。
 佐藤さんは俺のこと、どう思っているんだろう、とふと思う。
 まあ奴隷なんだろうけども、面白がって遊ぶオモチャなんだろうけども、こういう日常の時ってそんなからかうみたいな感じじゃなくて、本当に普通の友達みたいに話し掛けてくれる。
 そういう演技を他のクラスメイト向けにしているということなのかな、よく分からない。人の本心なんて分かったことないから。結局幼馴染の子の言葉も聞けぬまま、彼女は引っ越してしまったし。
「また何かどしたん?」
 佐藤さんは俺の顔の異変によく気付く。
 それこそ、この辺の演技には自信があったんだけども、佐藤さんにはすぐバレてしまうんだ。
「別に。何でもないよ」
「じゃあ笑ってよ! あーしが話してんだからさ!」
 そう言って俺の背中をバンバン叩いてきた。
 ちょっと痛かったけども、そんなこと気にならないくらいには心地良かった。
 授業&授業で、放課後になり、今回はLINEで通話しながら二手に分かれることにした。
 すると伊織さんが言っていたルートとは全く違う道を、その伊織さんが言った特徴のおじいさんが犬の散歩をしているところを目撃した。
 そのおじいさんは妙にハツラツと、犬のリードを短めに持って歩いていた。
 ここから商店街の中に入るし、ちゃんと普通のおじいさんだと思ったその時だった。
 前から自転車が来たタイミングでなんとリードを徐々に長くしていって、あわや犬が自転車にひかれそうになったのだ!
 「危なっ」って声に出るところだった。何これ、偶然? 気の緩み? よりによってそんなタイミングでリードを長くするなんて。
 また短く持って歩いていると、今度は前からちょっと派手めな、胸元をザックリ開けた女性が歩いてきた時に、またリードを長くし始めて、一体何なんだと思った。
 するとその派手めな女性はその目の前に来た犬に気付いたみたいで、一瞬何か飼い主のおじいさんに話し掛けていた。
 おじいさんはデレデレした笑顔を浮かべながら、派手めな女性のほうを振り返っていたので、多分犬のことを褒められたに違いない。
 最初の自転車はマジで分からないけども、もしかすると女性に犬を褒められたくて、わざとそういう時にリードを長くするようにしている?
 じゃあ伊織さんの時も犬のことを褒めてほしくて、リードを長くしたら踏まれてしまったみたいなことなのかな。
 そのおじいさんはおばさんが目の前から来た時はそのまま素通りで、だからって若い女性が来たら絶対リードを長くするとかそういうことでもなくて、でも時折、例えばキャバ嬢のようなドレスを着た子が来た時はリードを長くして、そのキャバ嬢のような子からは嫌がられていた。
 俺は佐藤さんに状況を説明しながら、おじいさんのあとをつけていくと、佐藤さんが俺とおじいさんの正面側からやって来て、おじいさんと佐藤さんがすれ違う時はおじいさんは何もリードを長くしたりはしなかった。黒ギャルは好きじゃないんだ。絶対に派手めの女性が好きというわけじゃないんだ。
 佐藤さんと落ち合ってから、ずっとおじいさんのあとをつけて、結局おじいさんはそのまま一軒家の中へ入っていった。
「何か分かった?」
「いや佐藤さん来てからはリードも長くしなかったし」
「女性に話し掛ける口実みたいな感じ?」
「う~ん、一応そんな感じかなぁ」
 と思いつつも、最初の自転車のことを思い浮かべる。
 あのとき、自転車に乗っていた人って女性だったかな、男性だったかな、そこ覚えていないんだよなぁ。
「まあもし女性に話し掛けるためなら本当にただのスケベだし。伊織がお金払えなかったらそれこそ一発ヤらせろみたいな話かもしんないし」
「そうだよなぁ、でも何か違和感があるんだよなぁ」
「まっ、頭脳労働は益岡に任すし。期待してるし!」
 そう言って微笑んできた佐藤さん。
 その屈託の無い笑顔に、胸の奥が焦がれるような感覚。
 やっぱり、俺、佐藤さんのことが……って、歪んでるよなぁ、関係が。
 俺は家へ戻ってきて、気分転換にオナニーすることにした。
 今回は池橋栄子の初期作品で、気軽にシコる感じでいこう。
 最初の頃はバックにもBGMが掛かって、プールで水着を見せるだけの王道な感じ。
 ただウィンクしているだけで可愛いのは今もなんだけども、この時は本当にあどけないって感じだ。
 最近のセクシー疑似路線も悪くないけども、こういう刺激の薄めのシーンでじっくりオナニーすることも気持ち良いなぁ。
 本当に男性がいないって感じで、ってところで胸元が開いたメイドの恰好になった。首輪を付けている。
 その首輪に鎖は繋がっていなくてもなんとなくあるだけで興奮する。無いほうが裸に近いのに。
「ご主人様」
 と動画の中の池橋栄子がたどたどしい演技で喋る。
 一番の最新作では結構演技もマシになってきている感じだけども、当時はまだまだこんな感じだったなぁ。あの棒読みマッサージも前半の作品だったし。
 SNSもチェックしているから分かるけども、最近はドラマの仕事とかもあるらしいし、着実にステップアップしている感じがする……とはいえ、まだ胸の谷間を見せるだけの、グラビア女優としての仕事ばかりだけども。
 シーンというかカメラワークが変わって、池橋栄子を上から撮るシーンになった。
 上目遣いでめっちゃ可愛い! 最新作では上目遣いでアイスを舐めるシーンがあるけども、ただただこうやって上から撮るだけでも素朴でいいなぁ。というか胸デカすぎる。足元見えないんじゃないか?
 まあ胸の大きさは初期から変わらずで、スタイルも抜群で、黒髪の清純派で本当に可愛い。
 髪型がセミロングからずっと変わらないところも個人的に大好きだ。でもだからこそ、あの子に似ているということなんだけども。
 そろそろ射精するか、しごく手を早めて……イクッ!
 ハァ、ハァ、ゆっくりオナニーしていたから結構濃いのが出たな……って、待てよ、とティッシュでチンコを優しく拭きながら、俺は徐々に思考を形にしていった。