・【10 事件4.子供が転ぶ・解決編】


 正直また勃起してきている。
 もう一回シコってもいいかもしれない。
 いやシコろう。即座にまたカウガールのシーンを出した時、あれ? と思った。
 みるみるチンコはしぼんでいき、謎解き脳が走り出した。
 今更、賢者タイムに入ったって感じだ。
 もしかすると、伊織さんの弟、マサヒロくんが転んだことは偶然じゃないかもしれない。
 というか状況を組み合わせていくと……俺は即座に佐藤さんにLINEをした。
 最初は佐藤さんから『またえろいこと?』と書かれたけども、それよりももっと大切なことだと、謎解きの話だと前置きを書いて、今思っていることをどんどん書いていった。
 その結果、佐藤さんとはまた明日、同じ時間に公園へ行くことになった。
 決して鑑賞会じゃない、マサヒロくんが転んだ事件の解決のためだ。
 次の日も同じ午前十時に、俺と佐藤さんは昨日と同じテーブルに座って、周りを見渡すと、案の定、あの、フラフープや縄跳びを隣に放置して何もせずにダラっとスマホをイジっている集団がいた。
 というかそもそも午前十時の時点で、フラフープや縄跳びを遊び終えているって変だし、あんなマイルドヤンキーみたいな集団がフラフープや縄跳びをするはずないだろ。
 佐藤さんは後ろからその集団に話し掛けた。
「アンタらさぁ、フラフープで足を引っかけて、近くに来た子供を転ばしてるよねぇ?」
 じろりと佐藤さんのほうを見た、いかにも悪そうな男三人組。
「えっ? どこにそんな証拠?」
 と言った刹那、俺がフラフープを持ち上げて、佐藤さんがこっちを指差して、
「ほらこのフラフープ、縄跳びと繋がっていて、引っ張ると足かけられるようになってるじゃん。大人は転ばないかもしれないけども、子供だったらこれで転ぶよね?」
「はぁ? ただ繋げていただけなんだよ」
「何の意味が? というか今もスマホ、録画状態っしょ。だらだらしてんのに、ずっと録画とか意味分かんなさ過ぎ」
「それはこっちの台詞だよ」
 と言って立ち上がった男三人組、やっぱり喧嘩になりそうだと思ったその時に、俺と佐藤さんを陰から見守っていてくれた十人の方々が顔を出した。
「おい、スマホ見せろよ。昨日の弟くん? その動画残っていたらそういうことじゃねぇか?」
「というか他のヤツのスマホに別角度の動画とかあるんじゃね?」
「つーか俺の妹にガンつけてんじゃねぇよ」
 そう、佐藤さんの兄貴と、その友達だ。
 マイルドヤンキーの三人組はガチの人っぽい十人に完全にビビって、スマホを差し出していた。
 その結果が、
「これ弟くん? その子の弟くん?」
「いや動画いっぱいあってどれがどれだかだよ」
「ということはマジでそういうことしてたってことなんだぁ、公園で。みんなが使う公園で子供転ばして何が楽しいんだ? カスがぁああ!」
 と佐藤さんの兄貴とその仲間たちが喝を飛ばしたところで、男三人組は土下座して「もうやりません」と言っていた。
 なんとか一件落着したのち、佐藤さんの兄貴が俺に話し掛けてきた。
「益岡くん、君マジですごいね。そんなことに気付くなんて。久しぶりに善人やれてオレも気持ち良かったよ」
 ……何で俺の名前と一瞬思ったけども、まあ佐藤さんが兄貴に説明する時に名前くらい出すかと思っていると、
「ホントさぁ、うちの絵梨花、マジで毎日家で益岡くん益岡くんって言っててさぁ」
 と言ったところで佐藤さんが、
「ちょぉぉおおおおおおお! 余計なこと言うなしぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
 と顔を真っ赤にして荒らげたんだけども、こっちとしても余計なこと言っていないよなと思って、心臓がバクバクいい始めた。
 佐藤さんの兄貴は優しい笑顔で、
「まあ絵梨花ってちょっとアレなとこあるけど、仲良くしてやってくれよ」
「いいから! 保護者ヅラすんな! もう用無くなったから帰れよ!」
「アハハハハッ」
 快活に笑いながら兄貴とその仲間たちはぞろぞろと帰っていった。
 佐藤さんはハァハァと肩で息をしていた。
 いやいや、俺としても、マジで変なこと言っていないよな、佐藤さん……。
 その後、こういうことがあったと学校で伊織さんに話すと、めっちゃお礼言ってくれて、それはすごく嬉しかった。
 さらには伊織さんが学校側にもこういうことがあって、益岡くんと佐藤さんに助けてもらったと言ってくれたみたいで、どうやらまた株が上がったみたいだ。
 こうやって内申点を上げていけば、いつかは解放……もされなくていい、何かもうこの奴隷関係が癖になってきたから。