残りの常任理事国は緊急に会合を開いて、国連に参加する各国への対応を話し合い、すぐに行動に移した。
 中国寄りの国々を切り崩していくことを申し合わせたのだ。
 それは、反対票を無投票と棄権票に誘導することだった。
 これは反対票が減るというメリットがある代わりに有効投票数が減るというデメリットを併せ持っていたが、これしか対応策はなかった。
 
 早速、中国以外の常任理事国とその同盟国、パートナー国、友好国はあらゆる手を使って切り崩しを進めた。
 正攻法はもとよりあらゆる外交努力を駆使して連日連夜攻勢を続けた。
 特に『債務の罠』にはまっている貧しい国々に支援を申し出て態度を変えるように説得を続けた。
 その結果、ギリギリで90パーセントの賛成を得るという歴史的な快挙を手にした。
 中国は地団太(じだんだ)を踏んだが後の祭りだった。
 国連憲章は改訂され、常任理事国の拒否権廃止と三分の二以上の多数決の導入が決定された。
 国連は生まれ変わったのだ。
 
「ゼレンスキー大統領、改革を成し遂げましたよ」
 不曲は瞼に浮かぶ彼の顔に向かって日本語で呟いた。